ファクトファインディング™で課題設定を進める方法|7つのファクトと質問例
- 結論:ファクトファインディング™とは、お客様から得た客観的な事実をもとに、「今取り組むべき課題」をお客様と明らかにし、認識をそろえるための対話です。
- 必要な理由:お困りごとだけを聞いて提案に進むと、理想と現状の差や問題の原因を捉えられず、優先すべき課題と提案内容がずれてしまうためです。
- 解決策:「3つのステップと7つのファクト」を軸に、ヨコ・タテ・ナナメの質問やチャンクアップ/チャンクダウンを使い、情報を広げ、深掘りし、取り組むべき課題へ整理します。
ファクトファインディング™とは、客観的な事実をもとに、お客様と「今取り組むべき課題」を明らかにするための対話です。
商談でお客様の困りごとを聞けても、「何を優先して提案すべきか判断できない」「提案がお客様に響かない」「商談が前に進まない」と悩んでしまうことはないでしょうか。
その一因として、お客様から得た情報を並べるだけで、目指す姿と現状の差や、その背景にある原因まで整理できていないことが考えられます。営業に求められるのは、お客様の事業や役割を理解したうえで、客観的な事実から「今取り組むべき課題」を言語化し、お客様と認識をそろえることです。
弊社セレブリックスでは、この対話の進め方を営業現場で再現できる技術として体系化しており、書籍『セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』でも詳しくご紹介しています。
本記事では、3つのステップと7つのファクト(事実)を軸に、表面的な要望の背景から「今取り組むべき課題」を整理し、お客様と合意したうえで、納得感のある提案へつなげる方法を質問例や会話例とともに解説します。
あわせてお読みください
本記事とあわせて、『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』もぜひご活用ください。顧客が気づいていない課題を共に見出す「課題発見型営業」の重要性を説き、その中核となる「ファクトファインディング」の思考法と実践方法を体系的に解説し、提案前に勝負を決める力を養います。
目次[非表示]
課題設定が浅いと提案が響かない理由
お客様の困りごとは、必ずしもそのまま「取り組むべき課題」になるとは限りません。そのため、困りごとの背景にある問題や原因を整理しないまま提案へ進むと、本来優先すべきテーマとは異なる打ち手を提示してしまう可能性があります。
たとえば、お客様が「営業成果が伸びない」と話したとします。この段階では、まだ課題は設定されていません。
その言葉を分解しなければ、どの問題が成果を妨げていて、どこから着手すべきかが分からないからです。
- 商談数が足りないのか
- 商談化率が低いのか
- 受注率が低いのか
- ターゲットがずれているのか
- 勝ちパターンが言語化されていないのか
- 育成やマネジメントの仕組みがないのか
ここまで分解することで、「商談数を増やすべきなのか」「受注率を上げるべきなのか」「勝ちパターンを整えるべきなのか」が判断しやすくなります。
お客様の主観や解釈が混じった「課題もどき」で止めず、対話を通じて客観的事実を集めることが重要です。事実が揃えば、優先すべき問題と提案の方向性が明確になります。
課題設定が浅くなりやすい場面として、以下の4つが挙げられます。
- お客様の最初の発言を、そのまま課題として受け取ってしまう
- 「困っていること」を聞いて満足し、理想や現状との差分まで確認できていない
- 原因を特定しないまま、サービス説明や提案に進んでしまう
- 営業側の仮説を伝えるだけで、取り組むべき課題についてお客様の納得を得られていない
ファクトファインディング™では、言葉の背景や理想との差分、問題の原因まで確かめたうえで、解くべき課題をお客様と共有することが重要です。
3つのステップと7つのファクトで課題を整理する
商談で集めた情報を「今取り組むべき課題」へつなげるには、3つのステップと7つのファクト(事実)に沿って整理することが有効です。
ファクトファインディングでは、事業理解・問題発見・課題設定の3つのステップで、お客様の状況を捉えます。この3つのステップに、ビジネスモデル・現状・理想・問題・原因・示唆・課題の7つのファクトを組み合わせたものを、セレブリックスでは「課題設定の公式」と定義しています。
各ステップで確認する観点を整理すると、以下のようになります。
ステップ | 押さえるファクト | 確認すること |
|---|---|---|
事業理解 | 1. ビジネスモデル | お客様がどのような事業構造で成果を出しているか |
2. 現状把握 | 今どのような状態にあるか | |
問題発見 | 3. 理想把握 | 本来どのような状態を目指しているか |
4. 問題把握 | 理想と現状の間にどのようなギャップがあるか | |
課題設定 | 5. 原因特定 | 問題を引き起こしている原因は何か |
6. 示唆提示 | お客様がまだ気づいていない視点や今取り組む理由は何か | |
7. 課題設定 | 理想実現に向けて、今取り組むべきテーマは何か |
7つのファクトは、質問リストを機械的に埋めるためのものではありません。商談では上から順番に聞く必要はなく、すでに現状が明らかな場合は、理想との差分や原因の確認から入ることもあります。大切なのは、集めた事実をもとに「今取り組むべき課題」を明確にすることです。
ファクトファインディングの意味やヒアリングとの違い、基本的な進め方から知りたい方は、以下の記事にて詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
7つのファクトを引き出す質問の使い分け
7つのファクトを明らかにするには、お客様の言葉を広げ、背景を深掘りし、最後に課題として束ねる質問の使い分けが欠かせません。質問をただ増やすのではなく、目的に応じて使い分けることで、集めた事実が課題設定につながりやすくなります。
ファクトファインディングでは、質問を「拡散」「深掘」「収束」の3つの方向で使い分けます。
この3つの方向を、商談で使いやすい質問の型にしたものが、ヨコ・タテ・ナナメの質問です。
- ヨコの質問:拡散
- タテの質問:深掘
- ナナメの質問:収束
それぞれの質問の役割を、順に見ていきます。
ヨコの質問|テーマを広げる拡散質問
ヨコの質問とは、テーマを広げる拡散質問です。いきなり核心に入るのではなく、お客様が答えやすい事実や関心事から会話を始めます。
ヨコの質問の目的は、議論すべき土俵を見つけることです。顕在的なお困りごとだけでなく、経営・事業・部門・担当者それぞれの関心事を横断的に探ることで、自社が本当に貢献できる論点を見極めます。
ヨコの質問例:
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タテの質問|背景や原因を深掘りする質問
タテの質問とは、見つけた論点を深掘りする質問です。お客様の発言の裏にある背景、原因、構造を確認します。
タテの質問で重要なのは、相手を追い詰めないことです。「なぜですか?」を繰り返すと、質問ではなく尋問に感じられます。「背景を伺ってもよろしいでしょうか」「少し角度を変えて伺いたいのですが」といった表現にすることで、自然な対話として深掘りしやすくなります。
お客様が本音を話せなくなった瞬間、ファクトファインディングは成立しにくくなります。深掘りは、評価や詰問ではなく「背景を理解したい」「一緒に整理したい」という姿勢を示しながら進めることが大切です。
タテの質問例:
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ナナメの質問|課題合意に導く収束質問
ナナメの質問は、広がった情報を解くべき課題へ収束させるためのものです。商談で多くの情報を聞いても、整理しなければ、お客様も営業も「結局、何に取り組むべきなのか」が曖昧なままになります。
ナナメの質問で大切なのは、お客様自身が解くべき課題に納得できる形で、対話をまとめることです。課題を明確にしないまま提案すると、営業側の売り込みと受け取られやすくなります。反対に、お客様自身が課題を認めた後で提案すれば、納得感のある提案として受け止められやすくなります。
ナナメの質問例:
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質問をさらに使いこなすには、具体化と抽象化を行き来する
ヨコ・タテ・ナナメの質問を使い分けるうえでは、お客様の発言を具体化するだけでなく、必要に応じて一段上の目的へ視点を引き上げることも大切です。具体化と抽象化を行き来することで、表面的な要望の背景にある、本当に解くべき課題が見えやすくなります。
この具体化と抽象化を、ファクトファインディングではそれぞれ「チャンクダウン」「チャンクアップ」と呼びます。チャンクダウンとは、抽象的な発言を具体的な状況や論点に分解すること。一方、チャンクアップとは、個別の事象を一段上の目的や経営課題に引き上げることです。
目の前の困りごとを深掘りすることに集中しすぎると、「そもそも何のために解決するのか」という上位目的を見失いがちです。たとえば、お客様が「営業職を採用したい」と話したとします。この言葉をそのまま受け取ると、採用支援の話に進みそうです。
ここで「何人採用したいのか」「いつまでに採用したいのか」「どのような経験を持つ人材が必要なのか」と具体的に確認することは大切です。しかし、それだけでは採用要件は明確になっても、なぜ営業職を増やす必要があるのかまでは見えにくい場合があります。
そこで、一度チャンクアップして考えます。営業職を増やしたい背景には、「営業利益を伸ばしたい」「新規事業の売上を拡大したい」「大手企業への開拓を強化したい」といった上位目的があるかもしれません。
そのうえで、上位目的である大手開拓を実現するための具体的な課題に落とし込むと、採用だけではなく、以下のような論点が見えてくる可能性があります。
- 売れている人の勝ちパターンが言語化されていない
- 新人が再現できる営業プロセスがない
- 指導できるマネジメント層が不足している
- ターゲットや訴求軸が定まっていない
上位目的を確認し、具体的な論点へ落とし込むことで、本当に解決すべき課題が見えやすくなります。
抽象化してから具体化する会話例:
顧客:営業職をもっと採用したいんです。 営業:ありがとうございます。営業職の採用を強化したいと考えているのは、どのような背景からでしょうか?(※チャンクアップ) 顧客:そうですね。来期は大手企業の開拓を強めたいんです。 営業:大手開拓を進めるうえで、現在の営業組織ではどの部分が一番ボトルネックになっていますか?(※チャンクダウン) 顧客:実は、採用も必要なのですが、大手向けの勝ちパターンを教えられる人が少ないことも課題です。 営業:そうしますと、単に営業職を増やすことだけでなく、大手開拓の勝ちパターンを言語化し、育成できる状態をつくることが、重要な論点になりそうですね。 |
課題設定につながる商談の会話例
ここまで紹介した質問技術や課題整理の考え方を、実際の商談でどう使うのか、会話例で確認します。営業成果が伸び悩む企業への提案を例に、表面的な困りごとで止まる会話と、理想・現状・原因から課題を整理する会話を比較してみましょう。
表面的な困りごとで止まる会話例:
営業:現在、営業活動でお困りのことはありますか? 顧客:新規商談がなかなか増えないことです。 営業:月に必要な商談数と、現在の商談数にはどれくらい差がありますか? 顧客:目標は月30件ですが、現在は20件ほどです。 営業:10件不足しているのですね。では、商談数を増やすための施策をご提案します。 顧客:そうですね……。商談数は増やしたいんですが、今すぐ何かを導入するところまでは、まだ考えていないですね。 |
この会話では、お客様の悩みは聞けています。しかし、なぜ商談が増えていないのか、そもそも目指している状態は何か、商談数だけが本当に問題なのかまでは確認できていません。そのため、提案が「商談数を増やすサービス」の説明に留まりやすくなります。
課題を一緒に整理する会話例:
営業:今期、営業組織として特に達成したいテーマはありますか?(※ヨコの質問) 顧客:新規受注を増やしたいと考えています。 営業:ありがとうございます。新規受注を増やすうえで、理想の状態と比べて差が大きいのは、商談数・商談化率・受注率のどこでしょうか?(※タテの質問/チャンクダウン) 顧客:商談数も足りないのですが、商談化しても受注につながらないケースが多いです。 営業:受注につながりにくい商談について、事前のターゲット選定や準備はどのように行っていますか?(※タテの質問/チャンクダウン) 顧客:明確なルールはなく、担当者ごとの経験に任せている部分が大きいです。 営業:その結果、現場ではどのようなことが起きていますか?(※タテの質問/チャンクダウン) 顧客:新人は何を準備すればよいかわからず、マネージャーも商談前に十分レビューできていません。 営業:この状態が続くと、今期の新規受注目標にはどのような影響がありそうですか?(※タテの質問/チャンクアップ) 顧客:商談数を増やしても、受注につながる商談が増えなければ目標達成は難しいと思います。 営業:商談数を増やすだけでなく、受注につながる商談準備やレビューの型を整えることが、成果を安定させるうえで重要になりそうですね。(※示唆提示) 顧客:そうですね。まずは担当者任せになっている進め方を整える必要がありそうです。 営業:ここまでのお話を整理すると、新規受注を増やすうえで、商談数の不足だけでなく、受注につながる商談を再現するための準備・育成・レビューの仕組みに課題がありそうです。今回優先して取り組むテーマは、営業プロセスを標準化し、商談品質を安定させることだと理解しましたが、この認識で合っていますか?(※ナナメの質問) 顧客:その通りです。そこを整えないと、商談数を増やしても成果が安定しないと思います。 |
この会話では、ヨコの質問で関心事を広げ、タテの質問とチャンクダウンで理想・現状・原因を具体化しています。さらに、チャンクアップと示唆提示で事業目標とのつながりを整理し、ナナメの質問で取り組むべき課題を共有しています。
その結果、提案テーマは「商談数の増加」から「受注につながる商談プロセスの標準化」へと変わり、受注が安定しない原因に対して、どのような提案が必要かが明確になります。
課題設定から提案へ進む4つのポイント
会話例のように取り組むべき課題の方向性が見えたら、提案へ進む前に、その根拠や優先度を確かめます。ここが曖昧なままでは、お客様は「なぜ今、この提案を検討するのか」を判断しにくくなります。
課題設定の妥当性を確認し、提案内容と結びつけるまでの流れを、次の4つのポイントに沿って確認しましょう。
- 課題の根拠を事実で説明できるか
- 会社として取り組むテーマになっているか
- 今取り組む理由を共有できているか
- 課題と提案内容が直接つながっているか
1. 課題の根拠を事実で説明できるか
お客様の「困っている」という発言だけで判断せず、理想・現状・ギャップ・原因が具体的な事実でつながっているかを確認します。
以下の表では、商談でよく使われる質問を、理想と現状のギャップや背景、事業への影響を具体的に確認する質問へ言い換えています。
よくある質問 | 課題の根拠を確かめる質問 |
|---|---|
何にお困りですか? | 目指している状態に対して、現状どこに一番ギャップがありますか? |
なぜできていないのですか? | その状態が続いている背景として、体制・運用・ターゲットのどこに要因がありそうですか? |
いつから検討していますか? | この状態を変える必要性が高まったきっかけはありますか? |
ご予算はありますか? | 解決できた場合、事業上どのようなインパクトがありそうですか? |
このように、質問の意図を変えることで、お客様の認識だけでなく、課題の根拠となる事実を捉えやすくなります。確認の目安は、商談に参加していない人にも「なぜそれが課題なのか」を説明できる状態です。
2. 会社として取り組むテーマになっているか
担当者個人の困りごとを、事業や組織の成果に影響する課題として整理します。たとえば「新人が商談準備に迷っている」という状況は、「受注につながる商談準備の型がなく、商談品質が安定していない」という組織課題として捉え直せる場合があります。
以下を確認すると、会社として取り組む重要性を判断しやすくなります。
- どの事業目標や組織目標に影響しているか
- 担当者以外の部署やメンバーにも影響があるか
- 解決しない場合、どのような損失や機会損失が生じるか
3. 今取り組む理由を共有できているか
課題が明らかでも、取り組む時期が曖昧なままでは、提案の優先順位は上がりません。
以下の3つのうち、少なくとも1つは客観的な事実とともに確認します。
- Company(お客様自身):目標達成や組織課題への影響
- Competitor(競合):競合との差や、対応が遅れるリスク
- Customer(市場・顧客):顧客ニーズや市場環境の変化
「今期の目標達成に影響する」「顧客の購買行動が変化している」など、お客様自身が今取り組む理由を説明できれば、提案を検討する必然性が生まれます。
4. 課題と提案内容が直接つながっているか
最後に、提案する施策が、合意した課題や原因の解決に直接つながっているかを以下のように確認します。
- 合意した課題を、お客様の言葉で説明できるか
- 提案内容は、課題を引き起こしている原因に働きかけるものか
- 提案によって、現状がどのように変わるのかを説明できるか
- 提案の各項目に、商談で確認した事実との対応関係があるか
提案前には、次の一文が成立するかを確認してみましょう。
「〇〇という原因で△△という問題が起きているため、□□に取り組む必要がある。その実現手段として、今回の提案では××を支援する」 |
この一文がつながっていれば、提案は単なるサービス説明ではなく、お客様と合意した課題を解決するための選択肢になります。
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まとめ
ファクトファインディングは、客観的事実をもとに、「今取り組むべき課題」をお客様と明らかにし、合意するための対話です。理想と現状のギャップ、問題の原因、今取り組む理由を順に確認することで、提案すべきテーマが明確になります。
最初からすべてを完璧に聞き切る必要はありません。まずは、お客様の困りごとを聞いたあとに、すぐ提案へ進まず「本来どのような状態を目指しているのか」「現状とのギャップはどこにあるのか」「その原因は何か」を確認してみましょう。
実際の商談で使える問いの立て方や課題設定の考え方をより深く学びたい方は、セレブリックスが体系化した営業メソッドをまとめた書籍『セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』もあわせてご覧ください。
3つのステップと7つのファクトをもとに、「今取り組むべき課題」をお客様と整理し、納得感のある提案へつなげる方法を、より実践的に学んでいただけます。
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出典:当社資料
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