部下の目標を達成させる営業マネジメントとは?4つの管理ポイント
『営業の役割は目標を達成すること』
『営業マネジメントの役割は、「営業が目標を達成し続けるための機能」となること』
上記はセレブリックスが法人営業の成果を最大限に高めるために、「営業」と「営業マネジメント」の役割を定義したものです。
弊社はこれまで、20万人を超える営業パーソンの育成や12,000を超えるサービスの営業を支援してきました。
さまざまな企業の営業部門の課題を紐解いていくと、営業マネジメントが機能していないケースが多くあります。つまり、営業マネジメントが正しく機能すれば、営業部門の問題課題は解消され、パフォーマンスが向上する可能性が高まるのです。
このコラムでは、セレブリックスの営業コンサルティングサービスで最も相談の多い営業マネジメントについて、管理のポイントを4つのパートに分けて解説します。
目次[非表示]
- 1.マネジメントと営業マネジメント
- 2.目標管理
- 2.1.目標管理の極意は目標設定と合意にあり
- 2.1.1.目標数値に納得感があるか
- 2.1.2.ストレッチした目標数値を要望できているか
- 2.1.3.目標達成に対する合意とコミットを得れているか
- 3.行動管理
- 3.1.行動管理で具体的にやるべきこと
- 3.1.1.定量目標に対する達成度と進捗に対するアドバイス
- 3.1.2.KPI設定の例
- 3.1.3.行動改善の例
- 4.案件管理
- 4.1.案件に対する営業アドバイス
- 4.2.案件管理アドバイス
- 5.モチベーション管理
- 6.まとめ
マネジメントと営業マネジメント
営業に関わらず、セレブリックスではマネジメントの要件を以下の7つに定義しています。
- 顧客満足創造
- 戦略実現
- 当面業績達成
- 人材育成
- チームワークづくり
- 組織間連携
- 業務改善
各定義の意識の有無に関わらず、管理職の方々はメンバーの育成や他部門との連携など、日頃の業務の中で触れる機会が多いのではないでしょうか?
これら7要件の達成に加え、「営業組織のマネージャー」に求められるのは、営業組織のパフォーマンスを最大化し、営業パーソン個々の目標を達成に導くことです。それが「営業マネジメント」の役割です。
セレブリックスが定めている営業マネジメントは、以下4つの管理項目から構成されています。
- 目標管理
- 行動管理
- 案件管理
- モチベーション管理
営業部門の管理職は上記4つの管理項目を軸にマネジメントを行うことで、部下やメンバーの営業成果を最大化させることができます。
そして管理項目の中でも、セレブリックスでは行動管理と案件管理を重要視しています。
なぜなら、行動管理と案件管理は、営業パーソンの行動と商談の質を向上させることが、最も営業成果に直結しやすいと考えているからです。
同時に営業マネージャーが正しいやり方を覚えれば、誰にでも実現できるものなので、成果を作るうえで即効性があるのです。
行動管理と案件管理のことをセレブリックスでは「プロセスマネジメント」と呼んでおり、具体的に営業マネージャーがすべきことを定義しています。(後述参照)
では、4つの項目について解説していきます。
目標管理
営業パーソンの役割、存在意義は「目標達成」することです。
なぜなら、個々の営業パーソンの売上・粗利益等の目標達成が、チームやグループの目標達成につながり、同様に課・部門等の目標達成、最終的には企業の経営目標と深い結びつきをもっているからです。
目標管理は、こうした経営目標(企業目標)で掲げる数字を、部門から個々の営業パーソンに至るまで、連関した目標設計をすることが求められます。
また、個々に与えられた年間の目標は半期・月間・日別の目標にブレイクダウンし、日々の目標を達成するための行動計画をメンバーに描かせることが必要です。
目標管理は、それだけに執着してしまうと、「結果管理」になってしまうケースが多くあります。
結果管理になってしまうと、終わったことに対する指揮命令や指導にとどまってしまい、目標達成できているメンバーへの関わりが減ってしまったり、目標未達成のメンバーに対して詰め寄ってしまったりしてしまうことがよくあります。
目標を達成できる理由はさまざまです。営業パーソン自体のスペックはもちろんのこと、担当する顧客が優良顧客であった、外部環境の変化やインバウンドの量が増えたなど、営業パーソン自身のスキル以外の要素も多く関係します。
自身のスキル以外が原因で急に目標未達成となった営業パーソンは、次達成するためにどのような行動をすればいいのかわからなくなってしまいます。そんな状態で結果管理の指導をしても、「今さら言われても・・・」と営業パーソンが悲観的になってしまうのです。
つまり、「結果管理」をしても根本的な問題解決に至るケースは少なく、のちに挙げるプロセスマネジメントにしっかり関わり、営業パーソンが目標達成し続ける環境を創ることが重要なのです。
目標管理の極意は目標設定と合意にあり
目標管理で重要なのは、目標数値の「設定方法」と「営業メンバーとの目標に対する合意を得ること」です。
その際には、下記3つのポイントをおさえることが重要です。
- 目標数値に納得感があるか
- 目標数値はストレッチ(背伸びした目標)したものを要望できているか
- 目標達成に対する合意とコミットを得れているか
それぞれを解説します。
目標数値に納得感があるか
メンバーは、与えられた数字の根拠や納得感を潜在的に求めます。
達成しても達成しても上がり続ける目標と要望…。このような状況に疲弊してしまうことが多々あります。だからこそ、目標数値の落とし方(説明の方法)が重要なのです。
「目標なんだから与えられて当たり前」「与えられた数字をつべこべ言わずに達成すれば良い」と投げやりな対応にならず、「なぜ、この数字が今月の目標なのか?」根拠と理由をしっかりと説明しましょう。
一方で、部下の不平不満を鵜呑みにする必要はありません。 しっかりと、目標を追いかける意義や要望を伝え、合意の上で進めることがパフォーマンスの最大化に大きな影響を持つのです。
ストレッチした目標数値を要望できているか
達成して当たり前の数字を目標に設定すると、メンバーはその数値に到達するまでの努力しか行わなくなる可能性があります。
従って、目標は少し背伸びした「このままだと足りない」という数値を設定するのが、営業パーソンのパフォーマンスを最大化させます。実現不可能なあまりに高すぎる目標では、モチベーションや達成意欲に影響するので、営業マネージャーは、少し高めの目標を設定して要望し続けるスタンスが重要です。
目標達成に対する合意とコミットを得れているか
最後に、メンバーには目標を達成することにコミットさせましょう。
目標に対する意識・意欲の定点観測は時間を割いても必ず行います。これまでセレブリックスは多くの営業パーソンの教育に関わってきましたが、総じて優秀な成績を収めるハイパフォーマーは、目標達成に対する意欲が高いものです。
行動管理
営業マネジメントにおける行動管理とは、営業パーソンの行動をプロセス数値に基づいて管理すること。いわゆるプロセスマネジメントと呼ばれる部分です。
プロセスマネジメントは、「なぜ売れないんだ!」と結果だけでの管理や、「気合でとにかく売り切れ!」といった根性マネジメントではありません。プロセスの数字を紐解き、成果が上がらないボトルネックを発見し打ち手を打っていく、そして営業活動を最適化していくことです。
行動管理で具体的にやるべきこと
営業パーソンの行動管理において、具体的に営業マネージャーや管理職が「見るべき点」について解説します。
BDR(アウトバウンド・プッシュ型)の法人営業を行う企業がテレアポを行っていて、なかなかアポイントが獲得出来ていないというケースを想像してみてください。
アポが取れていない結果に対して「もっと取れ!」と指導をするのではなく、テレアポのプロセスを分析する必要があります。
- キーパーソン・決裁者にコンタクトできていないのか
- コンタクトしてからのアポイント率が低いのか
- そもそもコール数が足りていないのか
例えば、コンタクト率が低かった場合、「ターゲットはあっているか」「受付で余計な説明をしていないか」「架電の時間帯は適正か」といったポイントを細かく分析をして、対策を考え実践していく必要があります。
同様に、キーパーソンにコンタクトしてからのアポイント率の検証や、商談のフェーズでの検証も細かくプロセスごとに数字から問題・課題の仮説を立て、分析・対策していくことが重要です。
定量目標に対する達成度と進捗に対するアドバイス
個々のメンバーの営業傾向を把握するには、営業プロセスにおける主な指標を数値化することが必要です。これを【営業プロセス変数】と呼んでいます。
主な指標としては、
- コール数
- コールコンタクト数(率)
- コンタクトアポ数(率)
- コールアポ数(率)
- 新規訪問数(率)
- 有効商談数(率)
- 訪問受注数(率)
- 継続率
- 追加発注率
などがあります。
※飛び込みの確率やDM、SDR(インバウンド・プル型)の営業でも貴社の営業プロセス変数を明確化する必要があります。
そして、それぞれの指標における貴社での基準値を明確にすることが重要です。
基準値が明確になっていれば、営業プロセス変数を見て明らかに低い場合や、明らかに高い場合に異常値に気付けます。 例えば、SFAなどの営業プロセスマネジメントツールを導入すれば、これらの数値は営業が日々入力する数値(コール、訪問、プレゼンなどの件数)から自動的に算出されます。
マネージャーは、個々のメンバーについて上記の指標をチェックすることで、各メンバーの「できていること」「できていないこと」を明確に把握できます。そして改善ポイントを個別かつ具体的に示すことで、営業生産性を最も効率的に高めることができるのです。
ただし、SFAを導入すればすぐに営業マネジメントが機能して成果が上がるわけではありません。
あくまで営業マネージャーが見るべき指標や、改善指導方法をしっかりと理解しておく必要があります。 ちなみに売上や受注件数などの最終目標ではなく、最終目標を達成するために重要となる到達プロセス指標のことを「KPI」と呼びます。 KPIの設定とモニタリングはプロセスマネジメントの重要なポイントになるので、ぜひ覚えましょう。
KPI設定の例
例えば、以下のようなケースがあったとします。
- 商談受注率が平均10%のコピー機
- 1人あたりの目標を「3件/月」とした場合、3件÷10%=30件の商談が必要
- 商談数のプロセス数値を達成している営業パーソンは同時に受注目標も達成している
- 一方で、目標未達成者の多くは商談件数がショートしている
こうした場合、着目すべきは当然、プロセス上の商談数を達成させることに置くわけです。
しかし、KPIの設定を商談件数30件と置いては意味がありません。 一か月の達成数値の終着点をKPIにしてしまうと、プロセスでの管理が後手に回ってしまいます。同時に、商品の営業には当然営業リードタイム(接触から受注までにかかる期間)が発生します。
例えば、このコピー機の営業リードタイムが1週間だったとすると、遅くとも商談件数30件は、1か月の3週目の段階で到達すべきプロセス目標となります。
このようにKPIは商品の受注までにかかる、営業リードタイムも逆算した上で、1週目に○件の商談、2週目までに○件の商談、3週目までに30件の商談と、KPIを設定していくことが必要なのです。
行動改善の例
営業プロセス変数をチェックすることは、問題行動の早期の是正につながるという例をお伝えします。下図をご覧ください。
AさんとBさんの行動を比べてみると、Aさんは「キーパーソンコンタクト率が高い」ということが見てとれます。しかし、コンタクトしてからのアポイント率が低く、結果として2人とも同じアポイント獲得数となっています。
では、Aさんの行動のどこに問題があると言えるのでしょうか。
例えば、アポイント率が低いことから、トークに問題があるのかもしれません。それだけでなく、コンタクト率が異常に高いのはキーパーソン特定が不明確なのかもしれません。このように、行動管理をしっかりと行うことは、改善のポイントを明確にして正しい修正をおこなう為に必要なのです。
案件管理
案件管理とは、営業パーソンが商談を実施して見込化(有効商談化)した企業を、受注に向けて進捗させるためのマネジメントのことです。案件管理をおこなうことで、営業活動の阻害要因(ボトルネック)を発見できます。阻害要因を排除=「顧客が買わない理由」を失くし、受注数増加を目指します。
具体的にリーダー・マネージャーが見るべきポイントは以下の通りです。
- 見込み企業の確度は適正か
- いつまでも管理表から消えない見込み企業はないか
- ネクストアクション通りのフォローは出来ているか
- ネクストアクションの内容は適正か
- 受注のボトルネックに対する打ち手は明確か
- そのボトルネックを解消出来れば本当に進捗するか
- 提案内容や提案書のチェック
- 見込み案件の属性分析と横展開の要因分析
- 失注理由の分析
上記に加えて、顧客の決裁者に商談の場へ出てきていただくために、マネージャー自ら営業同行を実施し、商談確度の向上を図ることも重要です。
案件に対する営業アドバイス
個々の案件において、訪問してからクロージングに至るプロセス(いわゆるコアセールスと言われる部分)を、メンバーまかせにするのではなく、担当の営業パーソンの話を聞きながら、ともに案件を進めていきましょう。時には、マネージャーとして自ら同行することも重要です。
この場合も、前提となるのは、個別案件ごとの営業プロセスと商談内容の共有です。
自らが同行しない場合は、メンバーから「商談のボトルネックとなっているのは何か」を聞きだし、お客様が「買わない理由」を明確にしましょう。
メンバーからの報告には最低、以下のことを盛り込ませます。
- 事前仮説はどういったものか
- いつ
- どんなタイミングか
- 誰にアプローチしたのか
- 何を聞いたのか
- どんな提案をしたのか
- 何を顧客と確認・共有したのか
これを習慣化することで、メンバー自身も上記の思考プロセスに沿った営業を実践できるようになります。
メンバーとの話し合いのなかで、ボトルネック(=買わない理由)が明確になったら、それを解消するためのネクスト・ステップを具体的に指示します。
一方、顧客のニーズと提供できる解決策が明らかにマッチしない場合などは、根性論で何度も訪問させるなどはせず、引き際を指示することも営業マネジメントにおいて重要なポイントです。
案件管理アドバイス
メンバーが個々に多数抱えている営業案件をどう管理するかについても、アドバイスを提供する必要があります。これは、組織全体の営業効率を左右することになるからです。
まずは、個々のメンバーについて、
どの段階の案件がどれだけあるのか?
各案件のリードタイム、および受注確度はどのくらいか?
を把握しましょう。
さらに、「潜在案件の仕込み(=新規アポ、新規訪問)はどのくらい行なっているのか?」も把握しておく必要があります。プロセスマネジメントツールを導入していれば、これらも容易に把握することができます。
これらを把握する目的は、案件についての全体最適化を図り、パワー配分(優先順位づけ)を指示することです。多くの営業パーソンはどの案件にも全力で対応しようとするあまり、パワーが分散し、トータルの受注額を上げることに失敗しがちです。
例えば、「受注確度が5%のものと、85%のものに平等なパワーを割くのは合理的でしょうか?
そのほかにも、
- 商談の障害はどの程度か?
- お客様の真剣度はどのくらいか?
- パワーに見合うリターンの期待できる案件か?
などを見極めさせましょう。
メンバーに、「重要なのは、当たる数ではなく全体から得られるリターンである」ことを理解させるのも大切です。
モチベーション管理
モチベーションがない営業パーソンが成果を上げることはできません。
とりわけ、自身が扱うサービスや、所属する会社に対するポリシーや営業としてのスタンス、こうした意志が見られない営業パーソンが顧客から「この人なら信用できる」「この営業パーソンから買いたい」と思わせることは不可能です。
しかし、目標達成を全く実現できていない営業パーソンに、いきなりモチベーションを上げろという指示を出すのは現実的ではありません。成果が上がるからこそ、モチベーションが上がるのが営業という職種においては当てはまりやすいと言えるでしょう。
そのため、先に挙げたプロセスマネジメント(行動管理+案件管理)で成果を伸ばし、「目標達成できるからモチベーションが上がる」こういったサイクルを創ることに関わることが重要です。
また、メンバーとは定期的に面談を実施して、主張や悩みに耳を傾けましょう。時に的確なアドバイスよりも、「話を聴いてくれる」という行為に、安心感を覚えるものです。
また、人によって仕事や成長の動機は異なるため、パーソナルな情報を正しく把握し、 一人ひとりの動機に見合った関わり方を心がけましょう。あなた自身の持論や経験談を押し付けても、部下の心は動かない可能性もあるのです。
まとめ
今回のコラムでは、営業マネージャーが見るべきマネジメントのポイントについて解説しました。
内容をまとめます。
-
目標管理
└目標設定は納得感があり根拠を説明できるようにする
└目標数値は少し背伸びして達成できるくらいの数値を設け、要望する
└目標を達成させることにコミットさせる 上記を守り、かつしっかりと目標についてメンバーと話し合う -
行動管理
└結果の数字に着眼するのではなく、プロセス変数を明確にし、プロセスを管理する
└プロセス変数に対する、数字の乖離がないかチェック、問題点は即修正
└KPIの設定は、リードタイム等の受注要因を逆算し、その数値を短い期間ごとに設定する -
案件管理
└営業プロセス上の受注にならない可能性である「ボトルネック」に対する対策案を考える
└メンバーに聞くべきことを徹底的に聞かせる、報告させる
└ 営業同行などを実施し、自ら受注確度向上に努める -
モチベーション管理
└成果が上がるからモチベーションが上がる、というサイクルを創ることに意識を充てる
└ 一人ひとり、仕事に対する意欲や動機は異なるため、それぞれに合った対話を重視する
以上です。
日々のマネジメントに活かし、営業の成果を最大化させるために参考にしていただければと思います。
※この記事は、2014年7月に書かれた記事を再編集したものです。