大企業が抱える組織課題と実践している4つの解決策
「営業の課題は感じているものの、組織が大きすぎてなかなか手をつけられない」という悩みは、大企業に特有のものではないでしょうか。
例えば、
「既存顧客の対応が中心となり、新規顧客開拓が進まない」
「営業担当者ごとに営業成績に差がある」
「顧客情報など、必須情報が組織全体で共有されていない」
といったお悩みです。
本来、組織が大きければ大きいほど、このようなお悩みは真っ先に解決すべき課題です。しかし大きさ故に、手が回らない、俯瞰(ふかん)して見ることができない、ノウハウがないなどの理由で解決にいたらないこともあります。
そこで今回は、営業体制を見直す際に押さえておきたい重要なポイントを4つご紹介します。
※本記事は2020年11月に制作した記事を編集・更新しています。
目次[非表示]
- 1.企業内の営業組織で起きている問題
- 2.問題の解決策
- 2.1.①営業スキルの平準化
- 2.2.②情報共有の効率化
- 2.3.③購買体験価値の提供
- 2.4.④営業体制の移行
- 3.まとめ
| 【監修者】 |
セレブリックス営業総合研究所の所長兼セールスエバンジェリストとして、法人営業・購買・AI営業の最前線で研究や情報発信を行う。著書に『Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術』、『お客様が教えてくれた「されたい」営業』、『The Intelligent Sales~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~』などがあり、累計発行部数は10万部を突破。現在は取締役 執行役員CMOとしてマーケティング戦略や新規事業開発を牽引。営業プラットフォーム『YEALE』、『Japan Sales Collection』の監修や、Everything DiSC®認定トレーナーとしても幅広く活動している。 | |
企業内の営業組織で起きている問題
大企業とは、中小企業基本法において資本金3億円超、かつ従業員数300名超などの条件を満たす企業を指します。中小企業庁「2024年版 中小企業白書」付属統計資料※のデータに基づくと、国内企業の実に99.7%が中小企業であり、大企業はわずか0.3%に過ぎません。
こうした大企業は、業界内での認知度やブランド力、そして豊富な人材リソースという強みを持つ一方で、営業組織の改革が構造的に進みにくいという課題を抱えています。方針変更ひとつとっても、根回しや多層的な承認プロセスが必要となり、慣例やルールを社内の推進者だけで変えることは容易ではありません。
セレブリックスにお問い合わせいただく大企業様からは、特に以下のような営業課題を多くいただいています。
- 新商品をリリースしても、売れる営業パーソンが一部に限定されてしまう
- 顧客情報が個人単位にしか蓄積されず、組織全体で共有されていない
- 長年踏襲されてきた営業手法から脱却できず、感覚・経験などの属人的な感覚に頼った営業活動が続いている
- 年功序列の評価体制が根強く残り、成果を出す人材が適切に評価されない
これらの課題に共通するのは、「属人化」と「組織の硬直性」 という2つの構造問題です。セレブリックスでは1,400社・12,700サービス以上の営業支援実績をもとに、こうした大企業特有の営業課題に向き合ってきました。次章では、実際に課題解決に取り組んだ大企業が実践している4つのアプローチをご紹介します。
※出典:中小企業庁「2024年版 中小企業白書・小規模企業白書」 概要の付属統計資料
問題の解決策
大企業が抱える営業組織の課題は、一朝一夕には解決できません。しかし、実際に変革を成し遂げた企業には、共通して取り組んでいた4つのポイントがあります。
①営業スキルの平準化
近年、企業の営業組織は「属人化」の問題から抜け出し、組織や企業全体として業績を向上させたいという意識が強まっています。
そうした中で、属人化によって生じる主な問題には、次のようなものがあります。
状態 | 問題点 |
営業活動 |
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商談時 |
|
上記のような問題を放置すると、売り上げが伸び悩むおそれもあります。一方で、人手不足に加え、優秀な営業パーソンを育てるには多くの労力がかかります。その結果、多くの企業では営業パーソンごとのスキルのばらつきを解消できないままでいるのが現状です。
そこで、営業力を標準化できる仕組みをつくる必要があります。仕組みを構築するためには、次の流れを実践することが効果的です。
【営業力を標準化するロールプレイング方法】
- 営業現場での行動の違いを確認する
- その行動がもたらす結果の違いを確認する
- 営業現場で実施するアクションを型化する
- 型化したアクションを体得できるまでロールプレイングを繰り返す
上記の工程を通じて、営業担当者がどのような行動を取ればよいか、悩まずに済むような状況を作ることができます。このようなロールプレイングは昔ながらの方法ですが、決して軽視できません。ロールプレイングには「再現性」「習慣化」「成功体験を積める」といったメリットがあります。
社内で上記のロールプレイングを実施し、疑似的な成功体験を積んだ後、実際の現場でも同様に体現できるかを確認することが重要なステップとなります。ただし、実際の現場での行動を上司がすべて付き添って細かくチェックするのは、時間やコストの負担が大きくなります。
こうした課題を解決するためには、現場でうまくいった事例やポイントを集め、メンバー同士が手軽に共有できる仕組みを整えることが効果的です。その具体的な方法については、次の章でご紹介します。
②情報共有の効率化
多くの企業では、現場の営業状況が「見える化」できていないことが問題となっています。
営業現場で集まる情報には、お客様の現状の課題やこれまでの対策、さらには目標や方針など、売り上げを伸ばすヒントがたくさん隠れています。
そのため、情報を蓄積したり共有したりする仕組みがなければ、営業担当者が自分の勘や経験、根性に頼ったやり方から抜け出せません。
さらに、こうした現場情報がしっかりと蓄積されていれば、経営企画やマーケティングなど他の部署でも、有効なデータを活用した分析が可能になります。また、情報がリアルタイムで共有されると、営業組織や個人の課題にすぐ対応できるため、売り上げ向上につながります。
情報を蓄積するには、無料・有料を問わず各種ツールの活用が効果的です。最近は営業支援ツールも豊富に登場しており、弊社でも情報共有を目的に6つの用途に合わせてツールを使い分けています。
- 顧客の状況を社内で共有するため(SFA/CRM)
- 顧客情報を社内に蓄積するため(名刺管理システム)
- 知識やノウハウをリアルタイムで共有するため(社内SNS)
- 営業パーソンごとの特性や課題を把握するため(タレントマネジメント)
- 人には伝えづらい内容を相談し、組織コミュニケーションの課題を解消するため(エンゲージメントサーベイ)
このように、情報を社内で共有するには、目的や用途に応じて必要なツールを選び、導入することが大切です。ただし、ツールを導入しても思うような成果が出ず、うまく活用できていない企業様も少なくありません。
なぜこのような問題が起きるのか、その理由について次に説明します。
③購買体験価値の提供
前章で説明したとおり、データの蓄積と共有がなければ顧客情報を組織全体で活用できません。その結果、顧客への理解が十分に深まらず、顧客に合った提案が難しくなります。
実際に実現できる「顧客に合った提案」とは、顧客一人ひとりのニーズや状況に合わせた営業アプローチを実践し、「この人から買いたい」と自然に感じてもらえるような、満足度の高い購買体験を創出することです。営業の最終ゴールと言っても過言ではありません。
しかし、営業の現場では、営業アクションが属人的になりやすく、最適とは言い切れないコミュニケーションが発生しがちです。では、適切なコミュニケーションを実現するために、何ができるでしょうか。その答えのひとつが、セールスコンテンツの活用です。
セールスコンテンツは、TVCMや広告などのマーケティングコンテンツとは異なり、ターゲットがより限定されており、顧客に合わせてカスタマイズできることが求められます。営業パーソンが適切なコミュニケーションを実践するために、とても役立つツールです。例えば、以下のようなものがセールスコンテンツに当たります。
コンテンツ種別 | 具体的内容 |
①類似属性企業の支援事例 | 業種・規模・課題が近い企業での導入事例や成果をまとめたもの。「自社と似た企業でうまくいった」という安心感を与え、意思決定を後押しする |
②類似企業における成果データ・シミュレーション数値 | 顧客の状況に近い企業での実績データや、導入後の効果を数値で示したもの。具体的な数字を提示することで、提案の説得力を高める |
③カスタマイズされたデモ画面 | 顧客の業務や課題に合わせて調整したデモ画面や操作イメージ。「自社で使ったらどうなるか」をリアルにイメージしてもらうことができる |
セールスコンテンツを作成する際は、次のポイントを意識すると、顧客ごとに合った提案がしやすくなります。
ポイント | 説明 |
①会話のきっかけ(引き金)になる | 顧客との会話や意見交換を自然に引き出すきっかけとなり、商談をスムーズに進める役割を果たす |
②顧客の気づきを促す | 買い手自身が現状や目標を振り返る「問い」を生み出し、行動変化のきっかけを与える |
③懸念・反論への対応根拠になる | 買い手の懸念や反論に対して、データや事例をもとに適切に答えられる裏付けとなる |
④営業スキルに左右されない | 誰が使っても同等の成果が期待できるため、営業パーソン間のばらつきを抑えることができる |
また、顧客の購買フェーズ(認知・興味、比較検討、提案評価、社内稟議、利用開始)に合わせて、事例集やステップメールなどコンテンツの内容を使い分けることも効果的です。
営業フェーズごとに適切なセールスコンテンツを整備することで、顧客に寄り添ったコミュニケーションが実現しやすくなります。さらに、うまくいったアクションを社内でデータとして蓄積・共有し、アクションプランとして落とし込んでいくことが、営業スキルの平準化につながります。
④営業体制の移行
これまで述べてきた営業組織のあるべき姿は、大企業においては実現のハードルが高いのも事実です。「現状を大きく変えたくない」という組織の慣性が障壁となり、なかなか動き出せないという企業様も少なくありません。
しかし、そうした環境の中でも、理想的な営業組織の構築を実現した大手企業は存在します。以下では、そうした企業が実際に取り組んだステップをご紹介します。
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このプロセスの中でとりわけ重要なのが、最初のステップである「現状把握」と「課題認識」です。ただし、社内の推進者だけで進めようとすると、慣例や利害関係が障壁となるケースも多くあります。そのような場合は、第三者の視点を採り入れながら、客観的な事実をもとに現状と課題を整理することが有効です。弊社では、上記1〜6のプロセス全体を通じてご支援しております。
大手企業は人材リソースが豊富なため、営業の成功パターンを見つけやすい環境にあります。課題をしっかりと認識できれば、大きなインパクトにつながるアクションを起こすことも十分に可能です。ぜひ本記事を参考に、営業体制の見直しに取り組んでみてください。
まとめ
今回は、大企業が抱える問題と実践している解決策として、営業体制を見なおす場合のポイントを4つの要点でご説明しました。営業力を平準化できる仕組みやツールの整備を徹底し、顧客との適切なコミュニケーションを取るためのセールスコンテンツを作成することが誰もが売れる状態を作る第一歩です。
ただし、上記のような施策を実施するためにも組織の方針決定や推進力が必要です。そのため現状把握、課題認識から実施し、組織単位での方針を決めてから、営業組織のあるべき体制へ移行する流れが大事な役割を果たします。
ぜひ参考にしていただき、営業体制見なおしのためのヒントにしていただけますと幸いです。













