ファクトファインディング™とは?ヒアリングとの違いや質問例を解説
- 結論:ファクトファインディング™とは、お客様自身も気づいていなかった真の課題を発見・設定していく問いの技術です。
- 必要な理由:新規営業(アウトバウンド)において、顧客の課題がすでに顕在化しているケースは非常に少なく、受動的なヒアリングだけでは商談を前進させることができないためです。
- 解決策:株式会社セレブリックスが提唱する「事業理解・問題発見・課題設定」の3ステップに沿って能動的な問いかけを行い、顧客と一緒に真の課題(原因+示唆)を導き出すアプローチが有効です。
ファクトファインディング™とは、お客様自身も気づいていなかった真の課題を発見・設定していく問いの技術です。
営業活動において、丁寧にヒアリングをしているにもかかわらず、「提案が刺さらない」「必要性を感じてもらえない」「価格や機能の比較で終わってしまう」と感じたことはないでしょうか。
その原因は、お客様の話を聞けていないことではなく、お客様の言葉の奥にある構造的な原因や、まだ課題として認識されていない問題を一緒に見つけられていないことにあるかもしれません。営業において重要なのは、お客様の要望を聞き取るだけではなく、言葉の奥にある背景や原因、理想とのギャップを捉え、「なぜ今、この課題に取り組むべきなのか」を明らかにすることです。
このように、客観的事実をもとにお客様の真の課題を見つけ出す問いを、ファクトファインディング™と呼びます。弊社セレブリックスではこの考え方を営業現場で再現できる技術として体系化しており、書籍『セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』でも詳しくご紹介しています。
本記事では、ファクトファインディングの意味やヒアリングとの違い、商談で重要視される理由、基本的な進め方やポイントについて解説します。
あわせてお読みください
本記事とあわせて、『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』もぜひご活用ください。顧客が気づいていない課題を共に見出す「課題発見型営業」の重要性を説き、その中核となる「ファクトファインディング」の思考法と実践方法を体系的に解説し、提案前に勝負を決める力を養います。
目次[非表示]
- 1.ファクトファインディングとは、『真の課題を発見・設定していく問いの技術』
- 2.なぜヒアリングだけでは商談が進まないのか
- 3.ファクトファインディングとヒアリングの違いは「未来を見ること」
- 4.ファクトファインディングで営業が目指す状態
- 5.ファクトファインディングの基本的な進め方
- 5.1.ステップ1. 事業理解
- 5.2.ステップ2. 問題発見
- 5.3.ステップ3. 課題設定
- 6.ファクトファインディングで使える質問例
- 6.1.事業理解を深める質問例
- 6.2.問題発見につなげる質問例
- 6.3.課題設定につなげる質問例
- 7.ファクトファインディングを成功させるポイント
- 7.1.1. 質問だけで終わらせない
- 7.2.2. 主観ではなく客観的事実を見る
- 7.3.3. 理想の未来から逆算する
- 7.4.4. 最後は課題の合意を取る
- 8.ファクトファインディングで活用できる事例やデータ
- 9.ファクトファインディングは、お客様と一緒に未来を決める対話
- 10.まとめ
ファクトファインディングとは、『真の課題を発見・設定していく問いの技術』
ファクトファインディング™とは、お客様自身も気づいていなかった真の課題を発見・設定していく問いの技術です。
単に情報を聞き取るのではなく、問いを通じてお客様の認識を整理し、「今、何に取り組むべきなのか」を明らかにしていきます。
お客様の発言は大切な入口ですが、最初に出てくる悩みや要望は、まだ主観的な認識や表面的な「課題もどき」にとどまっている場合があります。
たとえば、お客様が「営業活動がうまくいっていない」と話したとします。この言葉だけでは、まだファクトとは言い切れません。
- 何がうまくいっていないのか
- いつから起きているのか
- どの部門、どの担当者に起きているのか
- 理想と比べて、どれくらい差があるのか
- なぜ今、それが問題になっているのか
こうした問いを通じて、曖昧な感覚を客観的な事実に近づけていく。それがファクトファインディングです。
出典:当社資料『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』より
なぜヒアリングだけでは商談が進まないのか
営業現場では、「まずはしっかりヒアリングしましょう」とよく言われます。もちろん、ヒアリングは重要です。お客様の状況を知らずに、良い提案はできません。
しかし、ヒアリングだけで商談が進むとは限りません。なぜなら、お客様は最初から自分たちの課題を正確に言語化できているわけではないからです。
たとえば、お客様が「営業メンバーの育成に課題があります」と話したとします。一見すると、課題が明確に見えます。しかし、この言葉だけで提案に進んでしまうと、表面的な解決策になりがちです。
本当に向き合うべきなのは、もう一段奥にある問いです。
- なぜ育成が課題になっているのか
- どの層のメンバーが育っていないのか
- 育成が進まないことで、どんな事業上の問題が起きているのか
- その問題は、今すぐ解決すべきものなのか
- 解決できない場合、どんな未来が待っているのか
ここまで掘り下げて初めて、営業は「研修を提案する」のではなく、「事業成長を阻む構造的な課題を解決する」提案ができるようになります。
ヒアリングは、お客様がすでに認識している情報を聞く行為です。一方、ファクトファインディングは、お客様自身もまだ気づいていない問題の構造を一緒に見つける行為です。
この違いを理解しないまま商談を進めると、営業はお客様の言葉をそのまま受け取り、表面的な提案をしてしまいます。
結果として、商談はこうなります。
「提案内容はわかりました」
「必要になったら相談します」
「他社とも比較します」
つまり、ヒアリングだけでは、お客様の中に 「今、買う理由」 が十分に生まれないことがあるのです。
ファクトファインディングとヒアリングの違いは「未来を見ること」
ファクトファインディングとヒアリングは、どちらも「聞く」という行為を含みます。しかし、目的も、扱う情報も、商談後に生まれる状態も大きく異なります。
ヒアリングが現状や要望を聞き取る行為だとすれば、ファクトファインディングは、お客様が目指す未来から逆算して、今向き合うべき課題を明らかにする対話です。
違いをまとめると、以下のようになります。

出典:当社資料『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』より
ヒアリングは、お客様の答えを聞く行為であり、ファクトファインディングはお客様と課題を共に見つける行為です。
■違いがわかる具体例
たとえば、SFAや営業管理ツールを提案する商談を考えてみましょう。
ヒアリングでは、「現在、どのようなツールで商談を管理していますか?」「入力のしやすさやレポート機能に不満はありますか?」と、商品に関する情報を確認していきます。そのうえで、「当社のツールは入力しやすく、商談状況を可視化しやすいので、営業活動の効率化につながります」と説明したとします。
もちろん、すでにツールの導入や入れ替えを検討しているお客様であれば、この会話は有効です。しかし、まだ買うつもりがないお客様にとっては、「便利そうなのはわかりましたが、今すぐ変更する予定はありません」で商談が止まってしまう可能性があります。
これは、会話の範囲が「ツール」という商品周辺にとどまっているからです。
ファクトファインディングでは、そこから一段広げて、お客様のビジネス全体に目を向けます。
たとえば、
「来期の売上目標を達成するうえで、今の商談管理や営業マネジメントのままで不安な点はあるのか」 「新人の立ち上がりや商談の改善は、どのように把握しているのか」 「失注理由や勝ちパターンは、組織として蓄積できているのか」 |
といった観点から、理想の状態と現状のギャップを一緒に確認していきます。
その結果、「単にツールを入れ替えるかどうか」ではなく、「売上目標を達成するために、営業活動を可視化し、再現性のあるマネジメント体制をつくることがどのような意味を持つのか」という会話に変わります。
商品を説明する前に、まずお客様が目指す未来を確認し、その未来に対して今の状態にどのような課題があるのかを共に見つける。ここに、ヒアリングとの大きな違いがあります。
ファクトファインディングで営業が目指す状態
ファクトファインディングで目指したいのは、お客様が自分たちの状況を整理し、「今、何に向き合うべきか」を前向きに捉えられている状態です。
営業がお客様から多くの情報を聞き出すことも大切ですが、それだけで商談が進むわけではありません。対話を通じて、お客様自身の中に気づきが生まれ、課題解決に向けた納得感が少しずつ高まっていくことが重要です。
ここでは、商談を前に進めるために目指したい状態を3つに整理します。
1. お客様が自分の言葉で課題を認識している
理想的なのは、お客様が対話の中で「たしかに、そこが問題かもしれません」「今のままだと、目標達成は難しいですね」「それは解決したほうがよさそうですね」と、自分の言葉で課題を捉えられている状態です。
営業から見れば明らかに課題だと感じることでも、お客様自身の納得がないまま提案に進むと、どうしても受け身の商談になりやすくなります。だからこそ、営業が結論を急ぐのではなく、お客様と一緒に事実を整理しながら、課題の輪郭を合わせていくことが大切です。
2. 解決の重要性と緊急性に合意している
課題を認識できたら、次に確認したいのは「なぜ取り組む必要があるのか」と「なぜ今なのか」です。この2つが見えてくると、お客様にとって課題は単なる気がかりではなく、意思決定すべきテーマとして捉えられるようになります。
たとえば、営業組織の育成課題であれば、背景には以下のような事業上の影響があるかもしれません。
- 来期の売上目標に届かない可能性がある
- 新人の立ち上がりが遅れ、採用投資を活かしきれない
- トップ営業への依存が続き、組織として再現性が生まれにくい
- 競合が先に営業体制を整え、市場シェアを奪われる可能性がある
こうした背景まで整理できると、お客様は「いつか考えること」ではなく、「今、向き合うべき課題」として受け止めやすくなります。
3. 提案を受ける理由がある状態になっている
課題の重要性と緊急性に合意できている状態では、提案の受け取られ方も変わります。
お客様の中で「この課題を解決したい」という認識が育っていれば、営業の提案は単なる商品説明ではなく、「この提案を受ける理由がある」と感じられる選択肢として届きやすくなります。
「この提案は、自分たちが目指す未来に必要なものかもしれない」
そう感じてもらえたとき、商談は売る・売られるの関係ではなく、課題解決に向けて一緒に考える場へと変わります。ファクトファインディングは、提案の前にある商談の土台です。この土台が整っているからこそ、提案の意味が伝わりやすくなるのです。
ファクトファインディングの基本的な進め方
ファクトファインディングには、基本となる流れがあります。以下の3つのステップです。
- 事業理解
- 問題発見
- 課題設定
ここでは、考え方を中心に簡単に整理します。
ステップ1. 事業理解

出典:当社資料『【フィールドセールス基礎】ファクトファインディング編』より
まず必要なのは、お客様の事業やビジネスモデル、商談相手の役割や関心事を理解することです。
ここで重要なのは、調べればわかることをそのまま聞かないことです。事前に把握できる情報は押さえたうえで、商談ではその背景や意図に踏み込んでいきます。
会社概要やサービス内容をなぞるだけでは、お客様から「準備不足」と見られてしまいます。一方で、調べた情報を一方的に披露しても、ただの説明になってしまいます。事業理解で見るべきなのは、表面的な情報の奥にある背景です。
- なぜその事業に注力しているのか
- どの市場を狙っているのか
- どのようなお客様に価値を届けているのか
- 商談相手は、組織の中でどのような役割を担っているのか
- その人自身は何に関心を持っているのか
お客様の事業を理解できていなければ、問題の特定も、課題設定も浅くなります。ファクトファインディングの出発点は、相手を知ることです。
ステップ2. 問題発見

出典:当社資料『【フィールドセールス基礎】ファクトファインディング編』より
次に、現状と理想のギャップを明らかにします。
ここで注意したいのは、「困っていることはありますか?」と聞くだけでは不十分だということです。お客様がすでに困っていることは、顕在化した問題です。もちろん、それも重要です。
しかし、ファクトファインディングで見つけたいのは、理想の未来から逆算したときに見えてくる問題です。
- 本来、どのような状態を目指しているのか
- その理想に対して、今どこにギャップがあるのか
- そのギャップは、なぜ生まれているのか
- 放置すると、どんな影響があるのか
このように、現状だけでなく理想も確認することで、問題の意味が変わります。単なる「困りごと」ではなく、理想の未来を実現するうえでの障害として問題を捉えられるようになります。
ステップ3. 課題設定

出典:当社資料『【フィールドセールス基礎】ファクトファインディング編』より
最後に、明らかになった問題に対して、今取り組むべき課題を設定します。
問題と課題は似ていますが、同じではありません。問題は、理想と現状のギャップです。課題は、そのギャップを埋めるために取り組むべきことです。
たとえば、問題が「営業メンバーによって成果にばらつきがあること」だとします。このとき、課題は単に「営業研修を実施すること」ではありません。本当に設定すべき課題は、以下のようなものかもしれません。
- トップ営業の勝ちパターンを言語化すること
- 新人でも再現できる営業プロセスを整えること
- 商談ごとのフィードバックを均質化すること
- 個人の経験に依存しない育成体制をつくること
課題設定では、営業が一方的に結論を出すのではなく、お客様と認識を合わせることが重要です。
「ここまでお話を伺う限り、御社が優先して取り組むべきことは〇〇にあるのではないかと感じました。もし認識にズレがあれば、率直に教えていただけますか?」
このように確認しながら、お客様自身に課題を認めてもらうことが大切です。
ファクトファインディングで使える質問例
ファクトファインディングでは、お客様の現状だけを聞くのではなく、理想、背景、原因、影響まで確認しながら、課題の輪郭を明らかにしていきます。
たとえば、商談では以下のような質問が考えられます。
事業理解を深める質問例
- 現在、特に注力している事業やサービスは何ですか?
- その事業では、どのようなお客様に価値を届けていますか?
- 今後、どの市場やお客様層を伸ばしていきたいと考えていますか?
- その方針において、営業組織にはどのような役割が期待されていますか?
問題発見につなげる質問例
- 現在の営業活動は、理想の状態と比べてどこにギャップがありますか?
- そのギャップは、いつ頃から目立つようになりましたか?
- どのチームや担当者、商材で特に起きていますか?
- その状態が続くと、売上や組織にどのような影響がありそうですか?
課題設定につなげる質問例
- その問題が起きている原因は、どこにあると考えていますか?
- 今、優先して解決すべき問題はどれだと思いますか?
- その課題に取り組むことで、どのような状態を実現したいですか?
- 逆に、今取り組まなかった場合、どのようなリスクがありそうですか?
- ここまで伺うと、今取り組むべきことは〇〇にあると感じますが、この認識にズレはありますか?
質問を考えるときに大切なのは、項目を順番に消化することではありません。
お客様の発言を起点に、話題を広げる「拡散」、背景や原因を掘り下げる「深掘」、最後に認識をそろえる「収束」を行き来しながら、お客様自身が課題に気づける状態をつくることです。
具体的な質問設計や7つのファクトの引き出し方は、以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
ファクトファインディングを成功させるポイント
ファクトファインディングを実践するうえで、意識したいポイントを4つ紹介します。
1. 質問だけで終わらせない
ファクトファインディングというと、「良い質問をすること」だと思われがちです。もちろん、質問は重要です。
ただ、質問だけではお客様の認識を動かせないことがあります。特に、お客様がまだ課題を認識していない場合、質問を重ねても「今は特に困っていません」という答えで終わってしまうことがあります。
そこで必要になるのが、示唆や情報提供です。
たとえば、
- 他社ではこのような変化が起きている
- 市場ではこうした傾向が強まっている
- 同じような企業では、この問題が後から大きくなった
- この状態が続くと、将来的にこうしたリスクがある
といった情報を伝えることで、お客様は自社の状態を別の角度から見られるようになります。
セレブリックスでは、ファクトファインディングにおいて、問いに加えて、示唆、啓蒙、仮説提示、情報提供を行うことが重要だと考えています。
質問は、相手の中にある答えを引き出すものです。一方で示唆は、相手の見えていない景色に光を当てるものです。この両方があって、ファクトファインディングは深まります。
2. 主観ではなく客観的事実を見る
お客様の言葉をそのまま受け取るだけでは、ファクトファインディングにはなりません。
たとえば、「最近、商談の質が落ちている気がします」という言葉が出たとします。これは大切な発言ですが、まだ主観です。ここから客観的事実に近づけるには、さらに確認が必要です。
- 商談化率はどのように変化しているのか
- 受注率は下がっているのか
- どの商材、どのチームで起きているのか
- いつ頃から変化が出ているのか
- トップ営業と平均との差はどれくらいあるのか
こうした事実を押さえることで、問題の輪郭がはっきりします。
ファクトファインディングで扱うべきなのは、感覚ではなく事実です。ただし、お客様の感情を無視するという意味ではありません。感情を入口にしながら、その奥にある客観的な事実を一緒に見つけていく。この姿勢が重要です。
3. 理想の未来から逆算する
ファクトファインディングでは、現状だけでなく理想を確認することが欠かせません。なぜなら、問題は現状だけを見ても見えてこないからです。
問題とは、理想と現状のギャップです。理想がわからなければ、何が問題なのかも判断できません。

出典:当社資料『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』より
では、商談ではどのように聞けばよいのでしょうか。
いきなり「理想の未来は何ですか?」と聞いても、お客様は答えにくい場合があります。
まずは目標や方針を確認し、次にその実現に向けた不安や制約を聞く流れにすると、自然に理想と現状のギャップが見えてきます。
たとえば、営業メンバーの育成が話題に出た場合は、以下のように聞くとよいでしょう。
「来期の売上目標や事業計画を踏まえると、営業組織にはどのような状態が求められていますか?」 「その状態を実現するうえで、今の育成体制のままだと不安に感じる点はありますか?」 |
このように、現在の困りごとだけを聞くのではなく、「これから目指す状態」を先に確認することで、同じ現状でも課題の意味が変わって見えてきます。
同じ「営業メンバーの育成が遅れている」という状態でも、会社が目指している未来によって課題の意味は変わります。
たとえば、来期に売上を2倍にしたい会社であれば、育成の遅れは成長の足かせになります。新規事業を早期に収益化したい会社であれば、勝ちパターンを確立できないことが事業拡大の遅れにつながります。採用を強化して営業組織を拡大したい会社であれば、新人の立ち上がりが遅れ、採用投資を活かしきれない原因になるかもしれません。

現状だけを聞くと課題は小さく見えますが、理想の未来から逆算することで、課題の重要性が見えてきます。
4. 最後は課題の合意を取る
ファクトファインディングで最も大切なのは、最後に課題の合意を取ることです。
どれだけ良い対話ができても、お客様と認識がズレたまま提案に進んでしまうと、商談はうまくいきません。営業は、対話の終盤で一度立ち止まり、ここまで見えてきたことを整理する必要があります。
たとえば、以下のように確認します。
トーク例:
ここまでお話を伺う限り、御社が今優先して取り組むべきことは、単に営業メンバーを増やすことではなく、成果につながる営業プロセスを言語化し、誰でも再現できる状態をつくることにあるのではないかと感じました。もし認識にズレがあれば、ぜひ率直に教えていただけますか? |
このように確認することで、お客様の中でも「今、向き合うべき課題」が整理されていきます。
課題の合意がないまま提案に進むと、どれだけ良い内容でも、営業からの売り込みとして受け取られやすくなります。一方で、お客様自身が課題に納得している状態であれば、提案は単なる商品説明ではなく、その課題を解決するための選択肢として届きやすくなります。
ファクトファインディングで活用できる事例やデータ

出典:セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」
ファクトファインディングでは、質問だけでなく、事例やデータを活用することも有効です。なぜなら、お客様は自分の見えている範囲でしか課題を認識できないからです。
「現状で大きな問題はない」と感じているお客様でも、他社の事例や市場データを見ることで、自社の状態を客観的に見直せることがあります。
セレブリックスでは、データを単なる説得材料ではなく、お客様が自ら論理的な結論を導き出すためのナビゲーション・システムだと考えています。たとえば、以下のような情報がファクトファインディングに活用できます。
- 市場の変化を示すデータ
- 同業他社の取り組み事例
- 導入前後の変化がわかる成功事例
- お客様個別のシミュレーション
- 第三者機関の調査データ
特に有効なのが、導入事例です。導入事例には、数字だけではなく物語があります。
- 導入前にどのような悩みがあったのか
- なぜその課題に向き合う必要があると気づいたのか
- どのような議論を経て、導入を決めたのか
- 導入後に何が変わったのか
こうしたストーリーを伝えることで、お客様は他社の話を通じて、自社の課題を自分ごととして捉えやすくなります。
いきなり「御社も再現性のある営業体制をつくるべきです」と言われると、押しつけに聞こえてしまうかもしれません。そのため、まずは近しい企業の事例を通じて、お客様が自社の状況を客観的に見直せるきっかけをつくることが大切です。
トーク例:
「近しい業界の企業でも、以前は一部のトップ営業が成果を支えていたそうです。しかし、事業拡大に伴って商談数や採用人数が増えるにつれ、成果の出し方が人によってばらつき、育成にも時間がかかるようになっていました。このまま個人の経験や勘に頼り続けると、売上成長のスピードに営業組織が追いつかなくなる。そうした危機感から、営業プロセスの標準化に取り組まれたそうです」 |
このように伝えると、お客様は自然に「うちも同じ状態かもしれない」と考え始めやすくなります。
この気づきを生むことが、事例やデータの役割です。
ファクトファインディングは、お客様と一緒に未来を決める対話
ファクトファインディングは、営業がお客様から情報を聞き出すためだけのものではありません。お客様と一緒に、理想の未来を見つめる対話です。
今のままで、その未来に届くのか。届かないとしたら、どこに問題があるのか。その問題は、なぜ起きているのか。そして今、何に取り組むべきなのか。
この問いを重ねることで、お客様は自分たちの課題を少しずつ認識していきます。営業がすべきことは、答えを押しつけることではありません。お客様がまだ見えていない事実に光を当て、理想の未来に向かうための課題を一緒に言語化することです。
ヒアリングは、お客様がすでに認識している情報を聞き取る行為です。ファクトファインディングは、お客様と一緒に理想の未来を見つめ、今向き合うべき課題を共に見つける行為です。この違いを理解できたとき、営業はただの聞き手ではなくなります。お客様の思考を動かし、未来の意思決定を支えるパートナーになります。
あわせてお読みください
本記事とあわせて、『【セールスメソッド・ハンドブック】コンサルティングセールス実践 編』もぜひご活用ください。顧客が気づいていない課題を共に見出す「課題発見型営業」の重要性を説き、その中核となる「ファクトファインディング」の思考法と実践方法を体系的に解説し、提案前に勝負を決める力を養います。
まとめ
ファクトファインディング™とは、お客様自身も気づいていなかった真の課題を発見・設定していく問いの技術です。
商談が前に進まないときは、お客様から情報を聞けているかだけでなく、お客様と一緒に「買う理由」を見つけられているかを見直してみましょう。その違いが、提案を売り込みではなく、必要な選択肢へと変えていきます。
ファクトファインディングについてより詳しく知りたい方は、セレブリックスが体系化した営業メソッドをまとめた書籍『セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』もあわせてご覧ください。
お客様の言葉の奥にある事実を捉え、課題設定につなげるための考え方を、より実践的に学んでいただけます。
ファクトファインディング™について知るなら、この1冊!
弊社CMO / セールスエバンジェリスト今井晶也の最新著書『セールス・イズ 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』Amazonにて発売中です!
www.amazon.co.jp/dp/4594102972
プロの営業を目指す最初の一冊!
今井晶也のベストセラー著書、『セールス・イズ 科学的に「成果をコントロールする」営業術』も、ぜひあわせてお読みください。ファクトファインディング™を含む、営業ノウハウを余すことなく解説しています。
www.amazon.co.jp/dp/4594088740

セレブリックス営業総合研究所 の所長兼セールスエバンジェリストとして、法人営業・購買・AI営業の最前線で研究や情報発信を行う。著書に『 Sales is 科学的に「成果をコントロールする」営業術 』、その待望の続編として、2026年に『Sales is 2:ファクトファインディング おもしろいほど成果が出る、究極の「問いの技術」』を出版。その他、『 お客様が教えてくれた「されたい」営業 』、『 The Intelligent Sales~AIを活用した最速・最良でクリエイティブな営業プロセス~ 』などがあり、累計発行部数は13万部を突破。現在は取締役 執行役員CMOとしてマーケティング戦略や新規事業開発を牽引。営業プラットフォーム『 YEALE 』、『Japan Sales Collection』の監修や、Everything DiSC®認定トレーナーとしても幅広く活動している。














