営業職が早期に成果を生み出すための仮説思考とは


近年、国内の営業手法は環境変化やテクノロジー分野の成長もあり急速に進歩しています。
そして進歩と連動するように、営業に求められるスキルも複雑化しています。

その代名詞となるのが仮説思考型の営業です。営業はチャレンジの連続であるゆえに失敗はつきものですが、多くの方は、なるべくなら失敗を抑えて、高い確率で早期に成果を生み出すことを望むはずです。

そこで今回は、営業職が早期に成果を生み出すための思考法『仮説思考』を、明日から実践できるようにまとめています。     


目次[非表示]

  1. 1.仮説思考とは
  2. 2.仮説思考が必要になった理由
  3. 3.良い仮説とは、短い時間で問題解決が図れる仮説
  4. 4.早期に成果を創出する仮説思考型の営業手法
  5. 5.営業活動のあらゆるシーンで有効に働く仮説思考
  6. 6.仮説思考型営業の向き不向き
  7. 7.まとめ

仮説思考とは

 仮説思考を説明する上で仮説の存在が重要なのは言わずもがなですが、仮説とは、『仮の結論』を指します。
問題に対していまだ解を持ち合わせていない状態において、数多の情報から推察し、「これが解決策なのではないか?」と仮の結論として導き出すということです。

すなわち仮説思考とは、仮説を用いて問題解決策に近い解を導き出す発想法と言えます。

仮説思考という言葉は、元々ボストン・コンサルティング・グループが、問題発見能力と問題解決能力向上を目的に提唱していた発想法です。つまり、問題解決のプロフェッショナルが当たり前の様に活用する、問題解決においての発想法です。

コンサルタントの現場と同様、営業現場でも数多の問題が発生します。たとえば、「新サービスが立ち上がったものの、どの業界、職種と相性が良いのか分からない」「見込み顧客とのコミュニケーションにおいて、何に悩んでいるのか見い出せず営業活動の一歩が踏み出せない」そんなことが日常茶飯事です。こういった状況を解決するにあたり、装着しておきたいのが仮説思考型の営業スタイルなのです。    


仮説思考が必要になった理由

  では、なぜ今、商品説明型の営業スタイルではなく、仮説思考型の営業スタイルが求められているのでしょうか。
結論としては、情報の主導権が顧客側にある、という状態が増えてきたからです。

商品説明型の営業例としては、商品を認知しないままリストの上から下までひたすらテレアポし、たまたま興味をもってくれた企業にのみアポイントを設定し、顧客との商談では商品の説明を一辺倒にする営業スタイルです。
このような営業スタイルが通用したのは営業側に情報の主導権があったからです。しかし、誰もが当たり前のようにネット検索やSNSでの情報収集をするようになった今、営業だけが知っていた情報を既に顧客も知っている状況が生まれ、商品説明型の営業スタイルは通用しなくなってきました。

つまり、商品の情報だけを顧客に運んできた従来の営業としての存在価値は、既に損なわれつつあるのです。

実際、上記のような従来の営業と会いたい、と思ってくれる顧客はどれほどいるでしょうか。言い換えると、顧客が会いたい営業とは、どのような営業なのでしょうか。

それは、顧客さえも気付いてないような問題を提示し、解決できるソリューションを持っている営業です。
ずばり、見込み顧客の潜在的な問題を仮説思考で発想し、自社で所有するソリューションに落とし込めるのが、仮説思考型の営業スタイルと言えるでしょう。

そして仮説思考型の営業スタイルは2種類存在します。 

①豊富な情報の全てを網羅して、精度の高い仮説をじっくり導く論理的思考型
②豊富な経験を踏まえて、精度は低いが仮説と検証を繰り返して導く感覚的行動型

①②のどちらが良いのかは、場面や状況によって使い分けるのが良いでしょう。しかし、情報を網羅することに必死で、アクションが伴ってなければ本末転倒です。

仮説に正解はなく、アクションすることで初めて知ることも多いのです。よって、失敗を恐れ、確認に確認を重ねてアクションが伴わないケースよりも、短いサイクルで仮説と検証を繰り返す営業の方が高い成果を残すケースが多いのです。    


良い仮説とは、短い時間で問題解決が図れる仮説

仮説思考型営業を実施するにあたり、まずは仮説を立てるスキルを身につける必要があります。

営業にとって良いとされる仮説は以下の3つです。

①深掘りされている
②目的としているアクションに紐づく
③より良い方向に示唆できる

①深掘りされている

誰が見ても分かる情報を深掘りせずにそのまま伝えても、相手にとってのメリットは少ないでしょう。
そこで、情報を深掘りして仮説を立て、新しい発見を相手に伝える必要があります。 営業代行支援サービスの新規開拓を例にとって、必要な仮説を立ててみましょう。

とある見込み顧客のIR情報から新サービスの直近1年間の市場シェアを確認し、大企業へのシェアが5%、中小企業へのシェアが20%伸長という状況を仮定すると、以下のような仮説が立てられます。   

このように『なぜ』を繰り返すことで情報を深掘り仮説を立てることができます。トヨタ生産方式の「なぜを5回繰り返す」という言葉が有名ですが、トヨタ社員はトラブルに直面したとき「なぜそれが起きたのか」を繰り返し考え、安易な思いつきを結論とせず、真の原因を究明することを徹底しています。
ただ、どこまでいっても仮説は仮説でしかなく、以降は実際に顧客にヒアリングして証明できる証拠をもとに話を進めていくことが必要になってきます。

②目的としているアクションに紐づく

情報を深掘る方向性と、自身が起こしたいアクションを結びつける必要があります。先述した営業代行の例ですと、営業代行という特性上、人材リソースの提供に価値を感じてもらうことをゴールとして設定します。
そのため、競合参入前にスピード感をもって新規開拓をし、まだまだ白地が存在する市場でシェアを高めていく必要性を感じてもらうことができれば、インサイドセールスの営業代行による地方新規開拓を提案する機会を創出できる可能性が考えられます。

③より良い方向に示唆できる

また、顧客から見た営業の魅力は第三者目線でのアドバイスでもあるため、顧客が気付いていない方向への提案によって示唆することも可能です。

その分、普段からアンテナを張り、顧客が知り得ない情報も豊富に持っている状態を目指して営業活動をすると良いでしょう。    


早期に成果を創出する仮説思考型の営業手法

では、良い仮説を理解できたところで、早期に成果を創出する仮説思考型営業を明日から体現するには、どのようなアクションを起こせばよいかをお伝えします。

①仮説を立てる
②アクションする
③検証する

この3ステップが、仮説思考型営業を成功させるカギになります。①で少ない情報から高い精度で早く仮説を導き、②のアクションに移せるかが重要です。

ここで重要なポイントは、②のアクションの前に、全体感の把握をすることです。ロジックツリーなどのフレームワークを使って構造化し、全体感を把握してから、どの課題から着手するべきかを判断するのが良いでしょう。  

②で仮説をアクションに移す際、失敗への不安や緊張が必ず付きまといます。正解か不正解か分からないことを顧客を通じて確認するのですから、心配になるのも当然です。
しかし、営業は自身の思考や組織での議論で発想した仮説を信じ、正解を確かめる行為として割り切ってアクションすることをオススメします。

また、失敗から得た経験が次の仮説の精度を高めることを考えると、様々な経験をされた営業の方が良い仮説を立てられると考えていますので、トライ&エラーの感覚でどんどんチャレンジしていきましょう。

最後に③で検証フェーズに入る際は、下記2つの軸を持つことが大切です。

・定量分析:KPIなどの評価軸を設定し、目標と実績の比較をしていきましょう。
・定性分析:実際の活動を通じて得られた感覚値や顧客の声などを収集していきましょう。

これらの分析を通じて、得られた情報から改めて仮説をブラッシュアップするという流れになります。    


営業活動のあらゆるシーンで有効に働く仮説思考

ここまで新規開拓での有用性は感じていただけたかと思いますが、仮説思考を必要とするケースは大きく分けて2つあります。

・問題発見時:何が問題の真因なのか
・課題解決時:何が真の課題解決策なのか

上記2つの営業に関連する具体的な業務での利用例としては以下のようなイメージです。

 営業観点:新規開拓営業において、潜在的な課題発掘時
営業マネージャー観点:組織のパフォーマンス改善のための分析や判断時
営業・事業企画観点:テストマーケティングにおいて、営業手法やプロダクトの改善時

どの組織においても、問題/課題がないという組織はありません。無論、ビジネスにおいては問題/課題を発掘し解決していくことの連続です。

よって、短サイクルで高い精度の正解を導き出す仮説思考のスキルは、どの組織でも必要になるため、仮説構築力を高めることは自身のキャリアの選択肢を拡げることにも役立つでしょう。    


仮説思考型営業の向き不向き

仮説思考型の営業は人によって得意不得意はあると筆者は考えています。

得意タイプ

・チャレンジングで様々な経験をしたいと思える
・これまでの経験を踏まえて発想することが好き
・人の意見に対して否定的でなく、より良い答えを創出する

不得意タイプ

・行動を起こすのに慎重で、失敗やリスクを避ける
・人からの評価や指摘に敏感
・意見だしのMTGでは、控えめであまり発言をしない

組織であれば人によって得意不得意の個人差があるので、個性を理解して進めていくと良いでしょう。また苦手だと感じる方は仕組みを用意したり、日々のトレーニングからスキルを向上させていくこともできます。

①なぜを5回繰り返す(3章に記載)
②ロジックツリーを用いる(4章に記載)
③日常的にSo what?(だから何?)を考える

③の「So what?」の利用に関してですが、得た情報に対して自ら問いかけるように利用してみましょう。
たとえば、オリンピックを日本で行うことが決定した際に何が起きるのか問いかけてみると、観光をはじめとした消費アクションが活発化する点や、雇用が促進され雇用ニーズも高まるのではないか、という想定を日常的に考えることが「So what?」のトレーニングです。

苦手な方は、顧客に影響のない範囲で練習し、まずは自然に仮説を発想できるようになることを目指していきましょう。


まとめ

営業で早期に成果を生み出すためには、仮説思考が必要となることをお分かりいただけましたでしょうか。

問題解決につながる仮説思考のスキルを身に付けることは、営業だけではなく、様々な仕事で応用が効くでしょう。
是非、短サイクルで高精度の仮説を早く立てることにこだわって挑戦してください。


執筆:高橋佑甫


引用:
仮説思考 BCG流問題発見・解決の発想法/内田和成
トヨタ式5W1H思考 カイゼン、イノベーションを生む究極の課題解決法/桑原晃弥


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