元P&G宮下氏直伝!小売営業の勝ち筋をつくる商談話法の型と鍛え方

「緻密なデータ分析を行い、完璧な資料を準備したはずなのに、本部商談で首を縦に振ってもらえない…」多くのメーカーの小売担当営業パーソンが直面するこの壁を突破する鍵は、個人のセンスに頼らない、科学に基づいた営業モデルの構築にありました。

2026年1月に開催されたセミナー『小売営業を科学する。』では、P&Gジャパン合同会社や日本マクドナルド株式会社で営業組織を牽引してきた、宮下建治氏が登壇。属人化したスキルを構造化し、組織の武器に変えるための戦略的フレームワークを教えていただきました。

本記事では、その中から「本部商談の勝率」を上げることに焦点をあて、これまでの商談そのものを変えるための商談話法の型と、その具体的な習得方法について詳しく解説します。


あわせてお読みください

本記事と合わせて、「小売営業を科学する。」のセミナーレポートもご活用ください。小売営業の属人化を「勝ち筋」に変える考え方と、商談話法の型の解説の他に、再現性を回す全体設計や、売場体験価値のつくり方までを体系的に整理しています。


小売営業においてまず取り組むべきことは「商談話法」

営業活動には、市場分析、戦略立案、資料作成など多くの工程があります。しかし、どんなに緻密なデータ分析を行い、完璧な資料を準備しても、バイヤーの目の前で行われる商談で相手の心を動かせなければ、すべての準備は徒労に終わります。つまり、小売営業の成果を最も左右するのは商談の場であり、まず磨くべきは「商談話法」なのです。ここに再現性を持たせられるかどうかが、個人の成果だけでなく、組織全体の勝ち筋を決めます。

宮下氏の言葉:
「商談を制しないと、その前のプロセスが全部活かされないので、まず商談話法に取り組むことが一番大事です」

バイヤーが求めているのは、単なる商品情報ではなく、自社の売上・利益、そして在庫回転率を上げるための『アイデア』です。そのためには当然、バイヤー個人の課題や企業方針、そしてお客様のニーズを深く理解することが必要です。現在のサービスとのギャップを引き出すには「型」が必要であり、トレーニングが不可欠です。

商談を「引き出す」と「語る」に分解して型化する

多くの小売営業が陥る罠は、自社製品の情報や価格メリットを説得しようとすることです。しかし、再現性の高い商談とは、説得ではなく「課題の合意形成」のプロセスです。鍵になるのは、商談を 「引き出す」 と 「語る」 に分解して型化すること。これを実現するフレームワークが「コンセプチュアルセリング」です。

商談を構造化するコンセプチュアルセリング

この型により商談を「引き出す」と「語る」に分解し、バイヤーの脳内にある“ぼんやりとした課題”を具現化していきます。

手法

ステップ

目的

SPIN話法

引き出す

質問により、バイヤー自身に解決の必要性を自覚させる。

説得的販売話法

語る

明確になった課題に対し、解決策をストーリーで提示する。

単に「この商品は売れます」と言うのではなく、「貴社の今の在庫ロスという問題を、この商品を使った棚割り変更によって解決しましょう」という課題解決のコンセプトを売る。この視点の転換こそが、バイヤーの合意を勝ち取る決定打となり、勝率を劇的に引き上げるのです。

商談の勝率を上げる「3人1組」トレーニング

商談話法は、知っているだけでは身につきません。小売商談に再現性を持たせるには、現場での徹底した型の習得が欠かせません。宮下氏が提唱するのは、座学を踏まえた上で行う「3役ロールプレイ」です。

営業役とバイヤー役に加え、必ず「オブザーバー(観察者)」を配置します。ロールプレイ終了後、バイヤー役とオブザーバー役の両方からうまくいった点や改善点のフィードバックを行い、トレーニング自体のレベルを上げていきましょう。

フィードバックにおける観点の一例を紹介します。


【SPIN話法の質問のクオリティ】

  • 予算や棚割の現状確認の他、隠れた「業務上の悩み」を聞けたか。
  • 課題を放置した際の「損失額や現場の混乱」を具体的に問えたか。
  • 解決後の「利益向上や作業軽減」を相手の言葉で語らせられたか。


【要約と合意】

  • 相手の断片的な話を「解決すべきはこれですね」と整理し伝えたか。
  • 解決策を話す前に、今日の「商談のゴール」を互いに握り合えたか。
  • 話の区切りで「ここまでの理解は合っていますか」と逐一確認したか。


【得的販売話法のストーリー性】

  • 商品メリットだけでなく、課題解決までの「具体手順」を提案したか。
  • バイヤーの「目標数値」を達成できる根拠を提示できたか。
  • 導入後に「売場が活性化している」成功イメージを想起させたか。 

勝ち筋の構造化は商談の型化から始まる

宮下氏の言葉:
「成功している要因を因数分解すると、プロセスやスキルを体系化でき、それを他人と共有することで勝ち筋の構造化をしていくのです。」

本部商談において、バイヤーを論破して「説得」しても、その後の店頭実現や長期的な協働関係は望めません。本物の再現性とは、「バイヤーと課題を合意し、カテゴリー全体の改善プロセス」を型化することにあります。まずは自社の商談を分解し、共通の型を持つことから始めてみはいかがでしょうか。属人的な営業組織から、チーム全員で勝ち続ける組織にするきっかけは、商談の型化にあるのです。

本記事では、セミナー『小売営業を科学する。』の中から「商談話法」と「鍛え方」にフォーカスしてお届けしました。一方で、セミナー全体では、商談話法にとどまらず、小売営業を“個人のセンス”に依存させないための再現性ある営業モデルを、全体の構造から解き明かしています。 セミナー全体の全体像をまとめたイベントレポートは、以下よりご覧いただけます。

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