小売営業は店頭実現が7割。商談で終わらない、組織で動かす売り場づくり

この記事の要約(30秒でわかるポイント)
  • 結論:小売営業は、商談で終わりではありません。合意した内容を店舗で確実に実行する「店頭実現」が成果の7割を決めるため、個人商談より、組織で動かすことが重要です。
  • 必要な理由:合意しても店頭で実行されないと売上になりません。店舗ごとの実行差が大きいほど売上差も広がり、欠品や未陳列などの「自損」で機会損失が増えるため、対策が必要です。
  • 解決策:メーカーと小売を組織対組織で動かします。売上・利益・在庫・値付けを共通KPIにしてPDCAを回し、全店の売上差、導入スピード、販促物の設置率を見える化して改善します。

商談が通っても、なぜか売上が上がらない――。そんな経験、ありませんか?

実は、商談の成果は“店頭実現”で7割が決まります。営業パーソンが懸命にプレゼンした企画書が、現場の棚に反映されなければ、売上は生まれません。

この記事では、2025年9月に行われたセミナー「小売視点で見る“されたい営業”」から、株式会社ニュー・フォーマット研究所代表取締役社長の日野氏が語ったダイヤモンドモデルによる組織間連携と、完全作業・欠品対策という店頭実現の鉄則、さらに卸売業との協創によるカテゴリー全体の需要創造を、実践的な営業行動に落とし込めるようにお届けします。

※セミナーおよび本記事は、日野氏の著書『マーチャンダイジングとマネジメントの教科書』『ドラッグストア拡大史』を基に抜粋・構成したものです。


あわせてお読みください

本記事と合わせて、「小売視点で見る“されたい営業”」のセミナーレポートもご活用ください。日野氏の講義で語られた内容を抜粋し、現場で再現するための要点を図解つきで整理しています。施策設計と実行チェックにお役立てください。


売上の7割は「店頭実現」で決まる

日野さんはこう指摘します。「商談成果の7割は、店頭実現力(完全作業力)で決まる」

多くの営業担当者は、バイヤーから導入の合意を得ることをゴールだと考えがちです。しかし、商談で合意が取れても、それが全店で等しく実行されなければ売上には繋がりません。特にチェーンストアでは、店舗数が多ければ多いほど、店頭実現のばらつきが売上の格差を生みます。

完全作業とは、小売業界でよく使われる用語で、商談で合意した結果が店頭でどれだけ実現されているかということです。メーカーでは「店頭実現」という表現を用いる場合があります。

店頭実現ができていないことが原因で、A店とB店で10倍以上の差が出た例もあります。優れた繁盛店を作るより、店頭欠品を防ぎ売上の平均値を上げる方がチェーン全体の売上増に直結するのです。

一方で、新商品導入スピードも売上を大きく左右します。導入が早い店ほど新商品の売れ方が大きく違い、新商品は一定期間値崩れしないため利益も取りやすく、早く並べた店舗が大きな優位性を持ちます。

つまり、営業の勝敗は商談ではなく、店頭の棚で決まっているのです。

小売営業の売上を高める5つの手法

ここまで見てきた通り、小売営業の成果は商談で決まるのではなく、合意内容が現場でやり切られる=店頭実現までつなげて初めて積み上がります。そのためには、バイヤー個人との商談だけに依存せず、メーカー・小売双方の組織を巻き込み、共通KPIで進捗を管理し、商談後の実行度を高め続けることが欠かせません。日野さんは、店頭実現を組織として再現するための打ち手として、次の5つを挙げています。


①組織を巻き込むダイヤモンドモデルでPDCAを回す

まず1つ目は、小売営業は「個人対個人」(バタフライモデル)ではなく「組織対組織」(ダイヤモンドモデル)で動かすということです。日野さんが強く主張するのは、営業担当とバイヤーが1対1で合意を作り、現場・組織の実行体制まで踏み込めない構造、つまり点と点の商談であるバタフライモデルでは勝てないということです。

業界の上位企業で市場を大きく占めるようなキーアカウントと取り組む場合、万が一棚から落ちたときの影響は甚大です。こうした取引先に対しては、バイヤー個人との商談だけでなく、メーカーと小売の組織全体を巻き込むダイヤモンドモデルで、会社と会社として戦略的に取り組む必要があります。

巻き込むべき3つの部門

部門

役割

巻き込む理由

トップマネジメント

経営課題の共有・
方向性の決定

ジョイントビジネスプランは会社対会社の戦略合意が前提

商品部

カテゴリー計画・
仕入れ判断

従来の商談相手だが、単品商談では不十分

店舗運営部

陳列・在庫・
現場オペレーション

より現場に近く、実際に棚を動かす部門

特に、店舗運営部を巻き込むことが重要です。商品部だけで決めても、現場の棚が動かなければ売上は出ません。この商品を並べると、自分たちが確実に売れる・利益が取れると店舗運営部が理解すれば、積極的な協力が得られます。


②組織間で共通管理すべき4つのKPI

次に、組織で動かすならKPIを先に揃えることです。ダイヤモンドモデルでPDCAを回す際、以下の4つが共通KPIとして取り組む項目に入っているか確認しましょう。

  1. セールス売上 …        基本的な指標
  2. プロフィット(営業利益) …  粗利だけでなく、売場経費を引いた本当の利益
  3. インベントリー(在庫) …   商品回転率・在庫日数の共有
  4. プライシング(値付け) …   売上にも利益にも影響する最重要要素

避けるべき値付けのケースとして『一括仕入れ』のみに依存することが挙げられます。原価にカテゴリーで欲しいマージンをただ乗せるだけでは売上と利益のバランスが崩れるため、KPIを意識した価格設計が必要です。


③店頭実現を高める3つの進捗管理を必ず行う

商談後は、進捗を見える化しながら、必要な打ち手で店頭実現を取り切ることが重要です。店舗数が増えれば増えるほど、店頭実現の格差は大きくなります。そのため商談の結果よりも、後の進捗管理が売上を左右するのです。

【3つの進捗管理項目】

  • 全店舗の売上を比較する 
    一番売れている店と一番売れていない店を調べ、
    その差の原因(陳列位置、POP有無、在庫状況)を特定する
  • 新商品の導入スピードを可視化する
    全店導入の遅れをなくし、売上機会損失を防ぐ
  • POPや販促物の設置率を確認する
    販促物が届いても設置されないケースは非常に多い

ポイントは、商談直後〜導入初期のタイミングで「どの店舗が、どこまで、何ができていないか」を数字と現場情報で早期に把握することです。


④他損よりも自損を減らす

進捗管理を行いながら、競合対策より先に、棚に無い・見つからない自損を潰していきます。競合に奪われている売上(他損)よりも、棚に並んでいない・見つけられないために売り逃している売上(自損)の方が、放っていても売れていた時代には気づかなかった大きな損失になっていることを理解しましょう。

今はスマートフォンで棚を撮影するなど、メーカー・小売・卸が店頭実現を可視化するツールを活用する時代です。商談の結果が本当に棚に反映されているか、見に行く・確認する習慣が、これからの営業には不可欠なのです。


⑤卸売業と協創し、カテゴリー全体で需要を創造する

最後は、卸の強みを味方につけてカテゴリーで新しい定番をつくることです。メーカーは商品点数が少ないため、売り場全体をカバーしたカテゴリー提案には限界があります。そこで活かすべきなのが、卸売業のアソートメント機能です。

卸売業の最大の強みは、さまざまな生産業界の商品や、売り場に散らばっている商品を再編集することです。あるテーマで商品を集め直し、需要を喚起・創造していく役割を担うことができます。最近では「フェムケア(女性特有の健康課題)」というテーマで既存の商品を集め、新しい需要創造に成功している例もあります。

CDT(カテゴリーデシジョンツリー)で新しい定番を作る

メーカーと卸が組んでカテゴリーデシジョンツリー(CDT)を開発し、お客様の「使う立場・買う立場」に立った商品構成を作ることで、今までになかった新しい定番を生み出すことができます。

例えば、食品メーカーがドラッグストアに挑む場合、「健康」という切り口は強力です。お酢メーカーなら「健康に良い」という信用性が高いドラッグストアとの親和性を活かし、チームを組んで需要創造を進めることができます。

卸とメーカーが組んでCDTを作ることで、メーカー単独では実現できなかったカテゴリー単位の売り場提案が可能になります。これが、市場を大きくする需要創造の原動力となります。


まとめ バイヤーが求めているのは、店頭実現を支えるパートナー

今メーカー営業に求められているのは、商談の相手はバイヤー1人ではなく、小売側の組織全体であり、その勝敗は「店頭実現」で決まります。メーカー営業は「単品を売る人」から、CDTで新定番を作り、店頭実現を支える「売り場共創パートナー」へと変わる必要があります。

  1. 商談の終わりではなく、店頭実現を起点に動く
    完全作業、欠品対策、新商品導入スピード――商談後の進捗管理が売上の7割を決める。

  2. バイヤー1人から、組織全体(ダイヤモンドモデル)へ
    トップ・商品部・店舗運営部を巻き込み、売上・粗利・在庫・プライシングの4KPIでPDCAを回す。

  3. 卸売業と協創し、カテゴリーで需要創造する
    アソートメント機能とCDTを活かし、メーカー単独ではできない「新しい定番」を売り場に生み出す。

本記事は、日野氏の著書『マーチャンダイジングとマネジメントの教科書』『ドラッグストア拡大史』を基に抜粋・構成した内容です。書籍の詳細は各タイトルよりご覧いただけます。


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本記事と合わせて、「小売視点で見る“されたい営業”」のセミナーレポートもご活用ください。日野氏の講義で語られた内容を抜粋し、現場で再現するための要点を図解つきで整理しています。施策設計と実行チェックにお役立てください。

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