⼤型商品購買における営業担当者への期待と第⼀想起獲得に関する実態調査

⼤型商品購買における営業担当者への期待と第⼀想起獲得に関する実態調査
株式会社セレブリックスが運営する営業研究機関であるセレブリックス営業総合研究所®は、株式会社IDEATECHが提供するリサーチツール「リサピー®」と共同で、大型商品の購買意思決定者に対する実態調査を実施しました。
この調査から、大型商談の意思決定者が、営業担当者が提供する商材以外の情報を非常に重視していることが明らかになりました。
本レポートは、購買者が何を重視して意思決定を行うのかを掘り下げ、大型商談を成功に導くための営業戦略やコンテンツのあり方を探るものです。
調査概要
- 調査方法:IDEATECH社が提供するリサーチデータマーケティング「リサピー®」の企画によるインターネット調査
- 調査対象:従業員数300名以上の企業に勤めており、過去3年以内に年間500万円以上の規模のITシステムやSaaS、人材サービスなどの商品・サービスを、購買検討・発注した経験がある、購買・調達業務の責任者・担当者
- 調査時期:2025年7⽉16⽇〜同年7⽉21⽇
- 調査項目:⼤型商品購買における営業担当者への期待と第⼀想起獲得に関する実態調査
- 回答数:545名
購買決定のプロセスと重要視される要素
図1
大型商談のベンダー選定プロセスにおいて、回答者が重視する要素が上図1です。
商品や価格といった基本的な要素に加え、導入実績や企業の信頼性が上位に来ている点が特筆されます。
<考察>
特に知名度などが不足し、信頼性が担保されにくい中小企業やスタートアップにとって重要な関心事になるでしょう。 株主や業界のキーパーソンといった第三者からの推薦など、権威性を活用し信頼を補うことの重要性を示唆しています。
図2
続いて、「ベンダーの営業担当者の第一印象がどれぐらい購買に影響を与えたか」という質問です。
7点以上の回答が全体の50%を占めています。
一方で、約半数は第一印象だけではそこまで意思決定に影響していないという結果を示しています。
<考察>
大型商談では、個人の印象よりもソリューションや課題設定といった本質的な部分が重要視される傾向があると考えられます。しかし、第一印象が重要視されないという結果ではないため、注意が必要です。
購買者に刺さるコンテンツと情報提供
図3
図3の「決裁前の検討フェーズで、営業担当者に最も期待されることを教えてください」という質問では、提案型営業の本質でもある提案や課題解決方法を重視するという結果が最も票を集めました。
加えて、質問に対する正確な回答や聞きたいことが正しく説明されるというコミュニケーションの観点や、他社事例の共有を重視していることがわかります。また、多くの利害関係者が存在する大規模商談では、契約条件の柔軟な調整も意思決定に影響を与えます。
図4
次に「大型商談・サービスの購買検討において、ベンダーから商材以外の情報提供を受けることは重要だと思いますか」という質問です。
今回の調査で最も注目すべきポイントは、83%もの回答者が「商材以外の情報提供が重要」だと回答したことです。
<考察>
これは、大型商談において、商品を説明すること以外に、課題に向き合う意味やその具体的な方法などを情報提供できているかどうかが、意思決定に影響を与えることを示唆しています。
図5
図5の「あなたがベンダーから受け取って価値を感じた「商材以外の情報」を教えてください。」という質問では、特に求められている情報は、「成功事例と失敗事例」(54.1%)という結果でした。
次いで価値を感じたものとして、課題解決のためのガイドブックやセミナー勉強会の開催が挙げられました。
図6
また「その情報の中で、最も価値を感じたものの理由を教えてください。」という質問では、以下の回答が上位となりました。
・他社の成功・失敗事例を参考にできたから(47.2%)
・業界の最新動向を把握できたから(44.7%)
・専門知識を深めることができたから(44.2%)
・自社の課題解決に直接役立ったから(34.2%)
<考察>
いずれの結果も、自社を取り巻く周辺情報を手に入れることで、健全なギャップや向き合うべき課題が明らかになり、購買確度が高まったと予想できます。
また、特に事例を重視する点については次のように考えられます。
特に購買者が大手企業などの場合、すでに大きな市場が形成されている中で、競合との競争やシェア拡大を常に意識してビジネスをしています。そのため、ライバルの動きを敏感に注視しているはずです。
また、失敗を避けるため、リスクを事前に把握したいという欲求の表れだと予測できます。
このような商品を取り巻く周辺情報を提供することで、顧客自身が置かれている状況とのギャップが明確になり、意思決定しやすくなるということが推察できます。
図7
「その情報提供がなかった場合、ベンダー選定の結果は変わったと思いますか。」という質問では、約7割(69.5%)が「変わったと思う」と回答しています。
<考察>
商材以外の情報提供が、価格や条件面以外の要素で商談を動かす決定的な要因であることがわかります。
営業担当者に求められる資質
図8
次に「購買検討中に、ベンダーから定期的な情報提供やフォローアップを受けることについて、どのように感じますか。」という質問では、過半数の回答者が「好ましい」と感じているという結果が出ました。
<考察>
商談プロセスを前進させるKPI(中間業績指標)などで、提案数や商談数といったプロセスを指標に置くケースは多いと考えますが、この結果を見ると、情報提供を何回できたかという視点もモニタリングする価値がありそうです。
図9
図10
さらに、図9の「営業担当者から「御社に貢献したい」という姿勢をどの程度感じましたか」という質問では半数以上(55.1%)が7点以上と回答しました。
そして図10の、その「貢献したい姿勢」が「あなたの購買意思決定に与えた重要度」という質問でも同様に、半数以上(55.9%)が7点以上と回答しています。
<考察>
このことから、定期的な情報提供やフォローアップは、単なる営業活動ではなく、「御社に貢献したい」という営業担当者の熱意として受け取られることが明らかになりました。この熱意は、購買の意思決定に大きな影響を及ぼす重要な要素であると言えます。
図11
最後に「新たなニーズが発生した際に、最初に声をかけたいと思う営業担当者の特徴を教えてください。」という質問では、
「信頼関係が構築されている」「自社の事業を深く理解してくれる」「業界の専門知識が豊富である」という回答がいずれも4割を超えました。
<考察>
これらは、単に商品を売る営業ではなく、顧客の事業を深く理解し、専門知識を提供し続けることで築かれる「困った時に頼れる人」という存在になるための指標となります。
顧客に役立つ情報を提供し続けることが、最終的な信頼関係の構築につながると言えるでしょう。
まとめ
本調査から、大型商談の成否を分ける要素が、単に商材の優位性をアピールするだけではないことが明らかになりました。
購買意思決定者の83%が「商材以外の情報提供が重要」だと回答しており、これは大型商談が単なる価格競争ではなく、いかに顧客の課題を深く理解し、有益な情報を提供できるかという「情報戦」であることを表しています。
特に、顧客のリスク回避に役立つ情報や、顧客の事業課題を裏付けるような情報が意思決定に大きな影響を与えます。さらに、定期的なフォローアップや熱意のこもった対応は、「この人になら頼れる」という信頼関係を構築する上で不可欠な要素です。
これらの結果は、営業担当者が「単なる売り手」から「顧客の事業成長を支援するパートナー」へと進化することの重要性を強く示唆しています。顧客に寄り添い、商材以外の価値のあるコンテンツを提供できるか。それが、大型商談における成功の鍵となるでしょう。
営業総合研究所 所長コメント

今井 晶也 (いまい まさや)
取締役 執行役員 CMO
市場開発本部長 兼 セレブリックス営業総合研究所 所長
大型商談やエンタープライズセールスにおいて、「商品に関わらない情報やサポートもする」という情報を聞いたことがある人は多いでしょう。
しかし、それを論理的な理由で示してこれたかというとそうではない筈です。
今回の調査では大型商談を意思決定する購買者の視点で、どんな要素が意思決定に影響したかを紐解きました。大型商談の購買者にとっての「されたい営業」を理解することで、よい営業、よい購買が増えることを願っております。
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